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MPレーダを用いた、土砂災害危険域の抽出について

神奈川県の土砂災害の概要

2007年台風4号の通過により、神奈川県では以下の土砂災害が報告されています(神奈川県記者発表資料による。備考欄は新聞報道や現地調査による)。

場所 種別 備考
葉山町下山口 がけ崩れ マンションの階段が埋まる
秦野市渋沢上 がけ崩れ
小田原市国府津 土砂崩れ 工事中の宅地裏山から土砂が流出
小田原市城山 土砂崩れ 小田原城「八幡山古郭東曲輪」が一部崩壊
小田原市穴部 土砂崩れ 宅地裏山の一部が高さ250cm、幅130cmにわたって崩壊
横浜市中区根岸加曽台 土砂流出 急傾斜地の土砂が一部はがれ落ちる
横浜市磯子区丸山 土砂流出 造成地の切り土の一部が崩壊
横浜市南区永田北 土砂流出
横浜市保土ヶ谷区鎌谷町 土砂流出 造成地からの土砂流出
横浜市磯子区氷取沢 土砂流出 廃土からなる斜面が崩壊、公園内に土砂が流出

(現地調査については、小田原市の土砂災害調査結果および横浜市の土砂災害調査結果を参照して下さい)

マルチパラメータレーダ(MPレーダ)による500mメッシュ・5分間隔の雨量観測から、どの程度土砂災害危険域が抽出できたかを検討していきます。

半減期1.5時間実効雨量の状況

土砂災害のポテンシャルを求めるための指標として、「実効雨量」という概念が広く用いられています。実効雨量とは、降った雨が時々刻々と流出して土層内から失われることを考慮し、過去の雨ほど重みを軽くして積算する方法です。具体的には、以下の式で計算します。

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ここでR1は1時刻前、R2は2時刻前の雨量であり、Tは半減期と呼ばれる量です。半減期と同じ時刻だけさかのぼった雨量は、係数がちょうど0.5になりますので、0.5倍して足されることになります。

半減期1.5時間の実効雨量は、比較的早い流出に対応しており、土層の表層付近での土壌水分の変動に対応する指標であると考えることができます。

2007年7月14日〜7月15日における、半減期1.5時間雨量の最大値を以下に示します。図中の黒丸は、神奈川県における土砂災害の発生箇所を示しています。

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小田原市および秦野市周辺の土砂災害(図の赤丸)、および葉山町の土砂災害(橙色の丸)では、1.5時間実効雨量が20mmに達し、周囲よりも大きな値を示していますが、横浜周辺の土砂災害発生地(図の青丸)では、1.5時間実効雨量の値は20mm以下で、必ずしも大きな値を示していません。

半減期72時間実効雨量の状況

半減期72時間の実効雨量は、土層の比較的深い場所(50cm〜1m程度)における土壌水分量に対応した指標であると考えられます。7月14日〜15日における半減期72時間実効雨量の最大値は、以下のように分布しています。

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小田原周辺の土砂災害(図の赤丸)では72時間実効雨量が非常に大きな値を示していますが、葉山町および横浜市の被災箇所ではそれほど値は大きくありません。

まとめ

小田原市周辺では、半減期1.5時間および72時間実効雨量がいずれも周辺より大きく、両者を組み合わせた指標によって、土砂災害危険域がリアルタイムで推定できた可能性があります。

また葉山町の被災域では、1.5時間実効雨量が周囲より大きな値を示した時刻があり、短時間の降雨の集中によって土砂災害が発生したと解釈することができます。

ところが、横浜市の土砂災害域では、実効雨量で見る限り、周囲の災害の無かった場所とは特段の差が見られません。このことは、都市域における土砂災害予測の難しさを示唆しています。今後、地表における水の流れや、土砂災害の素因を考慮したよりキメの細かい危険度予測の研究が必要です。

台風第4号による大雨の被害等(2007年7月)