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ゲリラ豪雨を予測せよ

ゲリラ豪雨とは何ですか?

正式な気象用語ではありませんが、1時間程度の時間に、10キロメートルくらいの範囲に降る大雨のことを一般にゲリラ豪雨と呼んでいます。

ゲリラ豪雨と夕立は違うのですか?

ゲリラ豪雨と呼ばれるものは、普通の夕立よりも雨量が多いのが特徴です。2008年8月5日に東京都豊島区雑司が谷で5人の作業員が亡くなる災害がありましたが、この時の1時間雨量は100ミリを超えていました。夏の午後の夕立でこれほど多量の雨が降ることはほとんどなく、特異な雨の降り方だったということができます。

実際、この日は関東地方に100個以上の積乱雲が発生しましたが、このような降り方をしたのはここだけでした。

どうしてゲリラ豪雨の予測が難しいのですか?

強い雨を降らす範囲が非常に狭く、実態が充分に観測できないためです。「そもそも何ミリの雨が降ったのか」「雨雲の周辺ではどんな風が吹いていたのか」という基本的な情報さえわからないことがあります。

ゲリラ豪雨を観測できる新型レーダがあると聞いたのですが?

「Xバンド・マルチパラメータレーダ(MPレーダ)」と呼ばれるもので、防災科学技術研究所が平成12年に最初に製作し、10年以上にわたって実証試験を続けてきました。このレーダは、下の図のように、雨粒の「形」(空気抵抗でアンパンのようにつぶれている)を利用して雨量を推定します。

この方法を使うと、従来の気象レーダよりも素早く正確に雨量を求めることができます。

他に大阪大学が開発し、気象庁気象研究所が製作している「Kuバンドレーダ」というものがあります。このレーダは1〜2分の時間間隔、10m程度の空間分解能で観測ができます。

新型レーダでゲリラ豪雨を捉えたことはあるのですか?

はい。

下の図は2008年8月5日に発生した雑司が谷の豪雨を捉えた例で、左が現業レーダ(当時)、右がMPレーダの画像です。MPレーダにより局所的な豪雨の実態がより詳細に捉えられています(単位はmm/h)。

これでゲリラ豪雨の問題は解決ですね?

とんでもないです。まだ2つの大きな問題が残っています。

1つは「豪雨情報をどう伝えるか」という問題です。豪雨が観測されたとしても、現場にいる人々(地方自治体の防災担当者、建設現場、鉄道・道路管理者、一般の方々)に的確に情報を伝えなければ災害は軽減されません。

特にゲリラ豪雨の場合、雨が降り始めてから災害が発生するまで20分くらいしかありませんので、迅速に情報を伝える必要があります。

もう1つは「予測」の問題です。豪雨の発生がより早く分れば、より効率的に防災活動を行うことができますが、予測はこれからの課題です。

解決のためにどんな取組みをしているのですか?

平成22年より「気候変動に伴う極端気象に強い都市創り」という研究プロジェクトをスタートしました。

このプロジェクトは防災科学技術研究所、気象研究所、東洋大学をはじめとする24機関が参画・協力して、局所的な豪雨・突風現象の解明、予測、防災担当者への情報伝達手法を5ヵ年計画で研究していきます。

どこで観測をするのですか?

複数機関の協力の下、首都圏を対象に観測します。用いる測器は

  • Xバンドレーダネットワーク(X-NET) → 「5分間隔で雨・風の状況を監視する」
  • Kuバンドレーダ → 「細かい分解能での雨雲の立体構造を捉える」
  • ドップラーライダー → 「大気中のエアロゾルの散乱を利用して風を観測する」
  • 航空機観測 → 「積乱雲の周りの大気状態を知る」
  • 大気境界層観測 → 「地表からの廃熱や水蒸気輸送の影響を調べる」
  • 高密度地上観測 → 「3kmメッシュの観測網をつくる」
  • GPS受信網 → 「大気中の水蒸気量を測る」
  • CバンドMPレーダ → 「広域で降水粒子の状態を知る」

などです。

どのような予測技術を開発するのですか?

  • 豪雨の5分前予測
  • 降水ナウキャスト技術の高度化
  • 強風ナウキャスト技術の実用化
  • データ同化手法の高度化

などを計画しています。

豪雨5分前予測って何ですか?

私たちが開発を目指している新しい予測技術です。地震では「緊急地震速報」が実用化されていますが、その豪雨版を目指しています。予測の原理としては、レーダを用いて上空の雨量を測定し、雨粒が地上に落ちてくるまでの時間を利用して、文字情報として緊急情報を流します。

100mm/hを超えるような猛烈な雨が突然降ってくる場合に、緊急的な情報として有効になるだろうと考えています。

情報伝達の問題は何ですか?

情報を出す側と受ける側の意識のギャップです。

情報を受ける人は、その立場によって、どのようなタイミングでどのような情報が必要かは様々です。それを考えないで一方的に情報を流されても、受け手の方は困ることでしょう。

また観測にも予測にも、必ず「誤差」(正しくない部分)があります。この正しくない部分をどの程度許せるかという問題も、情報を出す人と受ける人とで相互に理解しておく必要があります。

情報を出す人の自己満足にならないよう、情報を受ける人と充分なコミュニケーションをとりながら予測システムの開発を進めなければなりません。

新しい予測システムは実用化されるのですか?

実用化の前に、本当に役に立つかどうか、問題は無いかを確認するための社会実験を行います。社会実験には水防活動を行う人や地方自治体、民間企業、個人(モニター)に参加していただき、

  • 豪雨の監視・予測情報を活用した水防活動
  • MPレーダを活用した浸水危険度予測情報の地方自治体への配信
  • 稠密気象観測情報の鉄道運行管理への活用
  • 建設現場への監視・予測情報の提供
  • 教育現場への稠密観測情報の配信
  • 豪雨5分前予測情報の個人(モニター)への配信

などを行う予定です。

文責:三隅 良平