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降水短時間予測モデルの開発

降水短時間予測を行うために、2つの異なる予測方法を開発している。
ここではそれぞれの方法の長所・短所を紹介する。
将来的にはこの2つの方法を結合させ、短所を補えるシステムの開発を目指している。

降水域の時間外挿法による予測

洪水や氾濫予測に関しては、より正確な予測雨量情報が必要です。特に、近年問題になっている都市型水害を対象とした内水氾濫の予測には、短時間予測雨量情報(ナウキャスト)が重要です。近年の研究で、マルチパラメータレーダ(MP レーダ)は、従来型レーダに比べ高精度な雨量を推定できることが分かってきました。本研究では、MP レーダを用いたナウキャストの定量的な評価を行っています。

雲解像数値モデルによる予測

概略

  • 数値モデルによる予測とは、大気の初期条件を与え、物理法則に従って大気の時間発展を計算することである。
  • 初期状態から現実の大気の状態に近づくために1時間程度の計算が必要である(スピンアップ)。
  • 従って、数値モデルによる予測は1時間後から数時間後の降水量の予測に適している。
  • 反対に1時間までの降水量予測は時間外挿法が非常に有効である。
  • 数値モデルによる予測を行うために、防災科学技術研究所のスーパーコンピュータを使う。
  • 4時間先の雨量を計算するために、おおよそ1時間程度かかる。
  • このような理由からも1時間以内の予測は時間外挿法の方が有効であると言える。
  • しかし、2-3時間先までの雨量を予測するためには、数値モデルによる予測が不可欠である。
  • 防災科研ではこの「時間外挿法による予測」と「数値モデルによる予測」を組み合わせて、短時間降水量予測を行う計画である。


予測範囲

数値モデルによる予測を行う領域を示す。関東平野を覆う200 km×240 kmの範囲の
豪雨・強風の予測実験を行います。

予測スケジュール

一日8回3時間毎に4時間先までの予測を行うシステムを構築しました。
予測結果は主に予測精度向上のためのデータとして使用されます。

開発項目

数値モデルによる予測において、
MPレーダによって観測された雨と風の情報を使ってできるだけ早く
現実の大気状態を再現させるデータ同化手法(3次元同化)という方法を開発中である。
この方法が完成すると、「時間外挿法による予測」と「数値モデルによる予測」の
両方のメリットを生かすことができ、更なる予測精度の向上が期待できる。

数値モデルの特徴

防災科研では、名古屋大学地球水循環研究センターが
開発したCloud-Resolving Storm Simulatior (CReSS)
という雲解像数値モデルを利用している。
CReSSは、

  • ほとんど近似を行っていない力学過程(非静力学・準圧縮系)、
  • 雲水・雨・雲氷・雪・霰の混合比および数密度を予測する雲物理過程
  • サブグリッドの乱流による輸送量を評価する乱流過程
  • 地表面における放射収支を計算する地表面過程

の4つのフレームから構成される。

再現例

2007年5月31日20時頃に関東南部に大雨をもたらした事例の予測例。
21時頃から積乱雲からの冷気外出流と南風が収束し、新しい積乱雲が次々と発生している様子が再現されている。
http://mp3-watch.ess.bosai.go.jp/CReMP/png/20070531_18J/QRA.html

同化実験例

2006年7月15日に埼玉県、東京都などの広い範囲に大雨および降雹の被害を
もたらした積乱雲について、MPレーダと中央大学のレーダが観測した気流構造と
降水粒子の分布をCReSSの初期時刻付近に与えて、予測の修正を試みた。
レーダから得られる情報(雨と風の分布)を与えない実験(左上)では、
顕著な雨量や風の回転が見られない。レーダから得られる雨と風の分布を与えることで、
予測した雨の分布が、観測された雨量の分布に近づく(下図)

下図 : 左が観測された雨の分布。右が同化して得られた雨と水平風の分布。

データ公開

まだ一般公開の準備が整っていませんが、前日までの予測実験の結果(この場合は予測ではないが)を閲覧できるようにする予定です。