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高速スキャン型レーダを用いた強風監視・突風予測技術


研究代表者:前坂 剛,研究参加者:真木 雅之岩波 越・三隅 良平

目的

 JR羽越線脱線事故をもたらした極めて局地的な気象擾乱に伴う強風を監視し,その発生を予測する技術を確立することにより列車・航空機等への被害低減を図ることは国家的急務である.防災科研においてもプロジェクト研究により,MPレーダネットワークを用いた強風監視技術の開発を進めているが,現在のMPレーダでは,風の三次元分布を取得するのに 5-10分程度の時間が必要であり,竜巻・ダウンバースト等の激しい気象現象の監視には必ずしも十分ではない.また,MPレーダで検出している風は平均風であり,突風(最大瞬間風速)よりも小さな値を示す.防災的には平均風に対してどのくらい強い風が吹くか(突風率)も重要な指標であるため,その推定は非常に重要な研究対象である.
 本研究では,国内外で実用化に向けた開発が行われている高速スキャン型のレーダ(1分以内に三次元スキャンが可能)を用いた強風監視・突風予測技術の開発を行うための技術調査と,アルゴリズム開発・検証に必要な観測システムの開発を行うものである.

2006年度の実施内容

  1. 突風の観測とその予測手法の開発
    1. 突風検出用複合気象測器の設置場所の選定・設置と測定結果のリアルタイム収集システムの開発
    2. MPレーダ観測風と地上風の差違についての統計的比較
    3. 地上における突風予測手法についての研究
  2. 高速スキャン型レーダの開発
    1. フェイズドアレイ型レーダについての技術調査
    2. ブロードバンドレーダについての技術調査
    3. 米国CASA(Collaborative adaptive Sensing for the Atmosphere)との共同研究

2006年度の成果

突風の観測とその予測手法の開発

 突風検出用複合気象測器としてVaisala社のWXT510(観測要素:風向・風速・気温・相対湿度・気圧・降雨強度・降雹強度)を導入し,防災科研構内とMP-Xレーダ観測範囲内に設置した.そして,それらの測器をネットワークに接続し,防災科研内に設置したデータ収集サーバによる1分毎のリアルタイムデータ収集を可能にした.
 次に複合気象測器で観測された地表付近の風速とMP-Xレーダで観測されたその上空のドップラー速度との比較を行った.二つの風速の差は風速が大きくなるほど大きくなり,これらの速度の間には比例関係があることが示された.この結果は大気境界層内における風速対数則に矛盾せず,観測値から見積もった地表面粗度も妥当な値であった.これらの結果より,地表付近の風速や突風の推定において風速対数則の仮定が有用であることが示された.

高速スキャン型レーダの開発

 大阪大学の牛尾助教授のグループにより開発が進められているブロードバンドレーダについての技術調査を行った.
また,内閣府の米国竜巻調査に参加し,米国シビアストーム研究所等が所有するSバンドフェイズドアレイレーダの技術調査を行った.

CASAとの共同研究

 安価な小型気象レーダの開発と密なネットワーク化により高度3km以下の気象災害の観測・理解・予測を目的とする米国のCASA (Center for Collaborative Adaptive Sensing of the Atmosphere)プロジェクトにAssociate Member として参加し,CASAレーダの現地視察や情報収集を行った.また,CASAプロジェクトの主要機関であるコロラド州立大学からの研究者を受け入れ,レーダネットワークデータ処理アルゴリズについての研究を行った.