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自然災害に関わる非線形現象についての基礎的研究

実施期間:平成18年〜
研究代表者:下川信也
研究参加者:納口恭明・松浦知徳・野口伸一・鈴木真一・小澤久(広島大)

目的

 自然災害に関わる様々な情報を提供することは非常に重要であるが、その情報をより正確なものとするためには、その基礎としての現象そのもの理解への地道な努力を続けてゆくことが必要不可欠である。実際、ほとんどの自然災害の正確な予測は非常に難しく、そのことが自然災害による被害を拡大させる要因のひとつとなっている。そのような災害に関わる自然現象の予測の困難さは、多くの場合、その非線形的なふるまいに起因している。従って、自然災害の予測やそれに関わる情報の信頼度を高めるためには、従来の手法の精度を高める努力のほかに、非線形系を理解するための新しい方法を探る必要がある。本計画では、自然災害に関わる様々な非線形現象として、次の5項目を取り上げ、それらの予測可能性や共通して内在する自然の仕組みの解明を目指す。

研究内容

・熱塩循環における非線形現象(長期的な気候変動など)
熱塩循環の同一境界条件下の多重解間の遷移に焦点をあて、大循環モデルを使った数値実験とその結果の理論的な考察を行い、熱力学ポテンシャルの概念を使って、そのメカニズム明らかにする。
・粉粒体流動における非線形現象(雪崩・土石流・火砕流など)
粉粒体の流動現象とそれに伴うパターン形成の問題に焦点をあて、人工的な粒子を使った室内実験とその結果の理論的な考察を行い、そのメカニズムを明らかにする。
・風成循環における非線形現象(黒潮・亜熱帯循環など)
時間変化する風応力に対する風成循環のカオス的挙動に焦点をあて、エネルギー収支バランスモデルの導出・解析と中間的な複雑さを持つ数値モデル(準地衡流モデルやプリミティブモデル)を使った数値実験を行い、その様相とメカニズムを明らかにする。
・脆性破壊における非線形現象(地震など)
地球を覆うプレートの運動形態と世界的地震活動との関係に焦点をあて、プレートの収束・横ずれ・発散境界における地震の大きさのフラクタル構造の解析を行い、その相違とメカニズムを明らかにする。
・大気ロスビー波における非線形現象(台風など)
太平洋上で夏季に多く見られる高渦位気塊が台風や切離低気圧の発生源の一つであるという視点から、その分布の季節依存性や形成過程について、客観解析データからの解析を行う。

そのほか

 本研究は、以下の2つの外部資金のマッチングファンドである。
日本学術振興会 科学研究費補助金・基盤研究(C) "開放散逸系としての海洋・気候システムの熱力学的研究(代表者:下川信也)" H17〜H20 (3,100千円)
日本学術振興会 科学研究費補助金・萌芽研究 "地球の気候システムにおけるエントロピー最大生成説の検証とその一般化(代表者:小澤久(広島大))" H17〜H19 (3,000千円)

 上記外部資金においては、海洋・気候システムの長期的な変動に関わる熱塩循環(深層循環)が研究対象の中心であるが、本計画では、それのみならず、自然災害に関わる様々な非線形現象を対象とする。具体的には、同じ海洋に関わる現象でも黒潮や亜熱帯循環など風応力を主な駆動源とする風成循環(表層循環)や無限個粒子の力学とも単一粒子の力学とも異なる独特の挙動を示す雪崩・土石流・地盤液状化などの粉粒体の流動現象や数多くある自然現象の中でも最も「予測」が難しい現象のひとつである地震などの脆性破壊現象、甚大な被害をもたらす台風や切離低気圧の発生源として重要な大気ロスビー波(高渦位気塊)をも対象とする。従って、本計画は、流体現象、粉粒体現象、破壊現象と自然災害に関わる基礎的な現象をひととおり含む。その意味で、本計画は、自然災害を包括的に取り扱うことのできる防災科研ならではの特長を生かした計画となっている。将来的には、そのほかの自然災害に関わる非線形現象にも対象を広げてゆく予定である。