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平成10年栃木・福島豪雨

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中学校に流れ込んだ土石流(応急の土留めがしてある)

平成10年8月26日夜から31日にかけて、栃木県北部・福島県南部に豪雨が発生し、死者・行方不明者が24名、負傷者55名、住家全壊101棟、半壊156棟、床上浸水3329棟、床下浸水11518棟に達する大惨事になりました。この豪雨の大きな特徴は、非常に狭い範囲に雨が集中したことです。例えば雨の激しかった26日8時〜27日8時の24時間雨量は、アメダス那須で535mm、長沼で311mmという大きな値が記録されましたが、アメダス観測所のうち150mmより大きな値が記録されたのはこの2地点だけでした。500mmを超えるような大雨が、どうしてこのような限られた範囲に集中したのかが、この豪雨をめぐる最大の疑問です。

このような空間スケールの小さい大気現象に対しては、気象観測網が粗すぎるため、その理由を完全に解明することはできません。ここでは観測事実を列挙し、そこから降雨の集中機構を推定します。

観測事実としては

(1)20時間雨量が500mmを超えるような領域は、那須岳の南東斜面の幅約5km、長さ約15kmのバンド状の領域に限られていた。

(2)強い強度をもつレーダーエコーが、那須町の南西側で次々に形成された。

(3)強い強度をもつレーダーエコーが那須町周辺に到来した。これらのエコーは、那須町の周辺で移動を止めて停滞し、後ろからやってきたエコーと併合した。このパターンは数回繰り返した。

(4)レーダーエコーの強度は、那須岳の南東側で系統的に強まる傾向があった。

(5)那須町の約70km南西に、地上風が強く収束する場所があった。

(6)関東地方では850hPa、500hPa高度で南西風が卓越していた

(7)8月26日21時には、関東平野南部に暖かい気団が見られた。

また数値シミュレーションの結果から

(8)那須町南西の地上風の収束は、南東から流入する風系と、北から流入する風系とでつくられていた。南東風の形成には関東平野南西部を中心とする暖域の存在が、北からの気流の形成には山岳地形による強制効果が重要であった。

これらをまとめると、下の図のような降雨集中機構が推定されます(詳細は論文をご覧下さい)。

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豪雨の発生機構は推定できても、その予測は現在でも非常に困難です。豪雨の予測が充分にできない現段階では、レーダーや雨量計を用いた監視体制の強化と、リアルタイム情報の流通が災害の軽減に重要であると考えられます。