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2008年7月12日に東京都で発生したダウンバースト(速報)

平成20年7月12日の午後,寒気を伴った気圧の谷が本州を通過中に,奥多摩地方で積乱雲が発生し,その後東進していた.東京都渋谷区・目黒区・港区・江東区では,この積乱雲が通過していた15:15 〜 15:30 (日本標準時)に,工事用クレーンの倒壊や屋上の作業小屋の落下などの強風被害が発生した(図1).東京管区気象台の現地災害調査によると,この突風の原因はダウンバーストと推定され,突風の強さはフジタスケールでF0と推定されている.

本速報では,防災科研のX-バンドMPレーダ(海老名市・木更津市),中央大学(文京区)・防衛大学校(横須賀市)のXバンドドップラーレーダで構成される次世代気象災害監視レーダネットワーク(X-NET)で観測された,この積乱雲の内部構造について紹介する.

降雨強度

この積乱雲は 100 mm/hour 以上の強度をもつ降雨をもたらしながらほぼ東進していた(図1).この積乱雲が通過した新木場(江東区)のアメダス観測点では15:00〜16:00の間に 6 mm の降水が観測されている.

図1:平成20年7月12日15:30(日本時)に防災科研が海老名市に設置したMPレーダで観測された降雨強度(カラースケール).白丸は被害の発生した場所(東京管区気象台の現地災害調査速報による)を示す.

X-NET により解析された高度1 kmの水平風

X-NET の複数台のレーダで観測されたドップラー速度データを合成することにより,高度1 km における風向・風速の分布を求めた(図2).15:30頃,この積乱雲は発散性の渦(水平発散 0.005 /s 程度,鉛直渦度 0.01 /s 程度)を伴っていた.

図2:平成20年7月12日15:30(日本時)にX-NETにより観測された,積乱雲の動き(u=7.0 m/s, v=0.5 m/s)に相対的な水平風(矢羽根;短棒,長棒,旗はそれぞれ1 m/s, 2 m/s, 10 m/s の風速を示す)の分布.カラースケールは図1に同じ.

X-NET により解析された高度1 kmの鉛直風

高度1 km以下で風速の対数則を仮定することにより,高度 1 km における鉛直風の分布を求めた(図3).この積乱雲内の高度1 kmで 4 m/s 以上の強さを持つ強い下降流が解析された.

図3:平成20年7月12日15:30(日本時)にX-NETにより観測された鉛直風の分布(等値線;1 m/s毎;破線は下降流を示す).カラースケールは図1に同じ.

まとめ

X-NETによるレーダ観測データを解析した結果,平成20年7月12日15:15〜15:30に東京都渋谷区・目黒区・港区・江東区で突風の被害をもたらした積乱雲の下層には発散性の正渦と強い下降流が解析された.この結果は東京管区気象台による現地災害調査速報の結果(ダウンバースト)を支持するものである.

謝辞

X-NET参画機関(中央大学・防衛大学校)からのレーダデータの提供に感謝します.

参考文献