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2008年7月29日東京都大雨(レーダアメダスとMPレーダ雨量)

はじめに

2008年7月と8月は,急速に発達し局所的に猛烈な雨をもたらす豪雨が多発し,特に都市部で人命が失われるなどの大きな被害が出ました。例えば,7月28日神戸市では都賀川遊歩道で遊んでいた子供3名と大人1名がゲリラ豪雨による急な増水で流されて亡くなりました。また,東京では,8月5日,豊島区雑司ヶ谷付近で発生した豪雨により,下水道内で作業していた5名が流されて亡くなりました。

防災科学技術研究所では,これらの急速に発達し猛烈な雨をもたらす豪雨を監視し,都市型水害や土砂災害の発生を予測する研究を2006年からおこなっています。研究は5年計画で試験地は3000万の人が生活する首都圏です。この研究の大きな特徴はマルチパラメータレーダという特殊な研究用レーダを利用している点です。このレーダは現在気象庁が利用しているドップラーレーダの次の世代のレーダで,高分解能で高精度の雨の情報を求めることができます。今年は5年計画のちょうど中間にあたりますが,首都圏で7月29日に発生した豪雨を監視することに成功しました。以下,その結果を気象庁の雨量情報と比較しながら紹介します。

1時間積算雨量分布の時間変化

2008年7月29日,北関東で発生した雷雨が南下し東京都内で豪雨や落雷による被害がもたらされました。JR山手線は,落雷による停電により電車がストップし,帰宅途中の約12万人の乗客に影響が出ました。また,国立競技場でおこなわれていた日本とアルゼンチンの国際親善サッカーが豪雨のために中断し続行不可能となりました。図1左は気象庁が提供しているレーダアメダス解析雨量で,世界でもトップクラスの雨量情報です。日本全国を対象として約1kmメッシュの1時間積算雨量情報が30分毎に更新されます。図1右はマルチパラメータレーダから得られた雨量情報で時間間隔は10分,500mの雨量情報です。両者を比較すると,レーダアメダスでは捉えられることができなかった豪雨の時間的な変化や詳細な構造を捉えることができます。このような雨量情報は急速に発達する豪雨の監視に有効です。

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図1 1時間積算雨量(左:レーダアメダス解析雨量,右:MPレーダ).2008年7月29日.

予測例

次に,この事例について,予測ができたかどうかについて紹介します。図2は1時間の積算雨量の予測結果と観測結果を比較した図です。両者のパターンや移動方向はほぼあっていますが,予測雨域の位置や雨量の強さが観測と合っていません。今後の課題です。

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図2 1時間積算雨量(左:予測値,右:観測値).2008年7月29日.

まとめ

MPレーダという特殊なレーダを用いることにより2008年7月29日に関東地方で発生した豪雨を高分解能で捉えることができました。また,1時間先までの積算雨量を10分毎に予測することに成功しました。しかし,予測に失敗した例もあります。例えば,雑司ヶ谷の豪雨については予測することができませんでした。特に豪雨が発生する初期の段階の予測はうまく入っていません。変化の激しい豪雨を予測するためにはいち早くその前兆を捉える必要があります。そこで,これはチャレンジになりますが,雨になる前の段階,つまり,雲ができ雨に発達する段階を捉えることにより豪雨発生の直前予測ができないかを検討しています。また,現在の観測範囲は首都圏の一部に限られていますので,来年度は更にMPレーダやドップラーレーダを配置して首都圏全域を対象にした観測を計画しています。