トップ RSS ログイン

2013年10月台風26号に伴う伊豆大島の大雨土砂災害

(速報につきデータが修正される場合があります。内容は随時更新いたします)

更新履歴

第1報
2013年10月18日掲載

第1報(2013年10月18日)

(最終更新:2013年10月18日)

概要

 2013年10月15日から16日にかけて、関東の東海上を通過した台風26号に伴い、関東の広い範囲に記録的大雨が観測されました。特に伊豆大島では、24時間雨量が824mmに達し、土砂災害により甚大な被害が出ています。
 下記の初期解析より、16日未明に伊豆大島で観測された猛烈な雨は、関東沿岸で形成された局地的前線上で発達したレインバンドによってもたらされたと推測されます。

大島(アメダス)降雨概況

 図1にアメダス(大島)で観測された降雨強度(10分間雨量より算出)と積算雨量の時系列を示します。大島では台風の接近に伴い、15日9時頃より雨が降り始めました。15日23時を過ぎる頃より40mm/hを超える強い降雨が観測されるようになり、台風の中心が最も接近した16日午前1時から5時頃にかけては、80mm/hから150mm/hの猛烈な雨が継続していました。積算雨量は、15日9時から16日9時までの24時間で824mm、16日0時から6時までの6時間(図1の緑のシェードで示した時間帯)で525mmを記録しました。

amedas_Oshima.png
図1 アメダス(大島)で観測された10月15日9時(日本時間)から16日9時までの降雨強度(10分間雨量より算出)と積算雨量。

伊豆大島周辺の降水システム

 図2に気象庁合成レーダー降雨強度(mm/h)の水平分布を示します。15日18時頃から16日0時過ぎにかけて、関東から東海の沿岸部の広範囲に強い降雨域が分布していました。伊豆大島付近では、その南側に位置する新島や神津島付近で多数の強い降雨域が発生、北進し、伊豆大島上空を次々と通過していました。その後16日0時30分頃より、御前崎南〜伊豆半島南〜相模湾にかけて、西南西から東北東の走向を持つまとまった降水域(レインバンド)が形成されました。レインバンドはゆっくりと東進し16日6時頃に伊豆大島の東側で消滅しましたが、発生から消滅までのほとんどの時間において、レインバンドは伊豆大島上空に位置していました。大島(アメダス)で16日1時から5時にかけて連続的に観測された80mm/h以上の猛烈な雨(図1)は、このレインバンドによってもたらされたことが分かりました。

 図2に示した矢羽根は、防災科研及び電力中央研究所、国土交通省(東京および静岡地域)のXバンドMPレーダー、防衛大学校、中央大学のXバンドドップラーレーダーから推定した高度1kmにおける風向・風速です。16日1時頃より、千葉県北西部でも非常に強い雨が観測されました。関東周辺で算出された高度1kmの風の分布には、千葉県北西部に北東風と南東風の収束がみられます。この強雨域は、伊豆大島付近のレインバンドの延長上に位置しており、伊豆大島付近から千葉県にかけて、局地的な前線が形成されていたと推測されます。

izuoshima.pnglegend_rr_trim2.png
図2 気象庁合成レーダー降雨強度(mm/h)と、防災科研及び電力中央研究所、国土交通省のXバンドMPレーダー、防衛大学校、中央大学のXバンドドップラーレーダーから推定した高度1kmにおける風向・風速。(10月15日18時から16日9時までの動画はこちら;約9.4 MB)

気象庁ドップラーレーダーデータを用いた風の解析

 千葉県柏市と静岡県菊川市牧ノ原に設置された2台の気象庁Cバンドドップラーレーダー(以下、柏レーダーおよび牧ノ原レーダーと呼ぶ)が観測したレーダー反射強度とドップラー風速のデータを用いて、伊豆大島に豪雨をもたらしたレインバンド周辺の三次元気流構造を調べた。

 複数仰角スキャンから、格子分解能500mの三次元格子データを10分毎に作成した。図3(上)に、高度2.5kmにおける伊豆大島を中心とした120km四方の領域内で解析されたレーダー反射強度(カラー)と風ベクトルを示す。反射強度分布は柏レーダーと牧ノ原レーダーを合成して作成した。風ベクトルは2台のドップラーレーダーデータからデュアルドップラーレーダー解析を行うことで算出した。デュアルドップラーレーダー解析とは、複数台のドップラーレーダーデータを用いて、降水域内の東西風、南北風、および上昇・下降流を算出する解析である。本解析では、主に東西風と南北風の時間変化を詳細に調べた。

 特に地上の降雨強度が100mm/h以上となった午前3時から4時にかけて、伊豆大島周辺の高度2.5kmにおけるレーダー反射強度は35−40dBZを越える比較的強い値が断続的に観測された(図3上)。この比較的強い反射強度分布は南西から北東に線状に伸びており、図2の気象庁合成レーダー降雨強度分布図で見られたレインバンドと定性的によく一致している。このレインバンドに流入する強い南東風が4時30分頃まで解析された。4時30分以降は南風に変化し、また5時10分以降風向が北風に急変した。

 図3(上)に示すA−B断面における、鉛直断面図を図3(下)に示す。鉛直断面内における、南風から北風に変わる前線の位置を太実線で示す。また鉛直断面内における伊豆大島の位置を細実線で示す。特に地上の降雨強度が50mm/h以上となった1時から5時50分における、伊豆大島上空のレーダー反射強度は、高度1kmから5km以下で断続的に35−40dBZを越える比較的強い値が観測された。前線は、図3(下)の横軸で40kmから60km程度の位置に継続して形成されていた。

 図4にレーダー解析の結果をまとめる。伊豆大島付近に停滞した南風から北風に変わる前線に伴うレインバンドが大きな積算雨量をもたらしたと考える。注目すべき点として、通常100mm/hを越えるような降雨は、背の高い積乱雲(高度10km以上)からもたらされることが多いが、今回はそのような背の高い積乱雲は観測されなかった。

DUAL_TIME.gif

図3(上) 気象庁Cバンドドップラーレーダを用いたデュアルドップラーレーダ解析による高度2.5kmにおけるレーダ反射強度と風向・風速ベクトル場の時間変化。
図3(下) A−B断面における鉛直断面図。デュアルドップラーレーダ解析により、高度4km以下で風向が南から北に急変する位置を太い実線で示す。
伊豆大島付近がレーダーから100km以上離れているため、高度1km以下はレーダーの解析を行うことができなかった。

DUAL_GAINEN.png

図4 午前2時における伊豆大島上空の降雨と風の鉛直断面図。デュアルドップラーレーダ解析から高度4 km以下で、伊豆大島の北に風向が南から北に急変する前線が停滞していた。