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2014年12月16日-17日の北海道に被害をもたらした低気圧と高潮について

本件に関する連絡先

アウトリーチグループ担当者 大石・三好(029-863-7784)
水・土砂防災研究ユニット担当者 飯塚、栢原、下川

概要

2014年12月16日太平洋沿岸を移動する低気圧が三陸沖に達すると急速に発達し、その後、根室付近へと移動すると同時にそこに留まるような挙動をした。その猛烈に発達した低気圧の影響で、北海道内は16日午後から暴風雪が続き、札幌管区気象台によると、17日正午までの24時間降雪量は帯広空港で74cm、最大瞬間風速は根室市で39.9m/sを記録した。
根室市では満潮と重なった高潮が岸壁を越えて、浸水は最大で深さ約1.5mに達した。根室港では17日午前8時49分、海面の高さが通常よりも169cm(速報値)高くなった。市は約730世帯約1500人に避難勧告を出し、最大で69人が避難。高潮は同日午前11時ごろから引き始め、正午頃に浸水はほぼ解消した。

2014年12月17日の根室の潮位変化(気象庁HPより)
上記の最大潮位偏差は、実際の潮位(青)と天文潮位(橙)との差を表す。

最大高潮偏差の推算

AMeDASデータ(根室)から根室付近の中心気圧は950hPa程度、気象庁MSMデータ(図1)から根室付近の平均風速は25m/s程度であった。根室湾の水深は30m程度と浅く、それが100km程度広がっている(図2)。これらの数値から最大高潮偏差を推算(下記注参照)すると、低気圧による吸い上げ効果は、60cm程度、風による吹き寄せ効果は、湾方向と風向のなす角度を0度、遠浅の広がり(100km)を吹送距離として、104cm程度なので、計164cm程度となる。この推算値は、おおよそ報道された値に近い数値となる。より詳細な検討は、高精度を数値モデルなど使って行う必要がある。

図1 2014年12月17日9時(日本時間)の根室付近の風速分布(気象庁MSMから:単位 m/s)

図2 根室付近の海底地形(単位 m)

注)最大高潮偏差の推算式
高潮は、台風(今回の場合は、強い低気圧)が沿岸域に近づくと起こる。その潮位は、低気圧による吸い上げ効果と強風による吹き寄せ効果を合わせたものになる。最大高潮偏差は、次の式により推算される。
h=a(1010-P)+b(W×W)cosθ
右辺第一項が吸い上げ効果、右辺第二項が吹き寄せ効果を表す。ここで、h:最大高潮偏差(cm)、P:気圧(hPa)、W:風速(m/s)、θ:湾方向と風向のなす角度である。また、aとbは定数で、a=1、b=k*F/dであり、ここで、k=0.05、F:吹送距離(km)、d:水深(m)である。a=1は、気圧が1hPa下がると吸い上げ効果により海面はほぼ1cm高くなることを意味する。b=k*F/dは、遠浅の海ほど吹き寄せ効果は大きくなることを意味する。

簡易モデルによるシミュレーション結果

簡易な高潮推算モデルに気象庁MSMの海表面気圧と地上10m風速を外力として与えた場合の水位偏差の推算値

沿岸災害危険度マップから推定した根室市弥生町付近の3m上昇時の浸水域(緑の部分)

ただし、実際の浸水域と厳密に一致するわけではない(下記、現地調査を参照)。

(*) 沿岸災害危険度マップへ

現地調査

初版掲載:2014年12月24日

【調査目的】
・浸水範囲と浸水発生時刻の聞き取り調査

【調査日】
2014年12月22日-24日

【調査員】
飯塚聡、栢原孝浩

【現地の状況】
・聞き取り調査から、主な家屋への浸水域は根室市緑町雨水ポンプ場正面から丘へ向かう通り(清隆町通)の両側の地域(梅ヶ枝町1丁目、緑町1丁目、弥生町1丁目)で、海岸沿いの県道35号線から200m程度の距離の範囲。
・梅ヶ枝町1丁目の家屋内における浸水高は65cmで、道路では80cm程度に達していた。昔、通りの中央には川が流れていたが、現在、中央分離帯により塞がれている。今回浸水した地域では、大雨の際にもしばしば浸水被害がある箇所で、その対策のために緑町雨水ポンプ場が設置され、それ以後大きな浸水はなかったが、今回高潮により浸水を受けた。
・根室市は駅から海に向かって傾斜した地形であるが、浸水は根室市でも標高1-2m程度と特に低い個所で起きていた。概ね、沿岸災害危険度マップ(上記)や根室市の津波ハザードマップの浸水地域と対応していた。但し、30-50mの距離の範囲でも、わずかな高低差で浸水した家屋としていない家屋があった。海岸沿いの漁業関連施設を除くと、その他の海岸線沿いの道路での標高は5m以上あり浸水による被害はなかった。
・高潮による浸水時には、道路に小型漁船、漁具、海藻などの漂流物が多数見られ、また浸水により多数の自動車も損壊。その後降雪がなかったこともあり、週末までにほとんどが撤去されたため、調査当日には浸水の形跡は確認できなかった。
・(12月17日)7時半の時点で道路が歩行可能な程度に浸水し、8時頃には家屋にも浸水するようになり2階へ避難。すぐに、一部地域でボートでの救出活動が始まると同時に周辺地区へ避難勧告が出され、避難可能な住民は数10m先の高台などへ避難。消防、知人からの連絡、テレビなどから避難勧告の情報を得たとのこと。11時頃には水が引き始め、午後には帰宅。また、調査を行った日にちょうど営業を再開する商店も一部見られた一方で、浸水した家財道具などの片づけなどを続けている家屋も見られた。浸水時刻は、港湾局が根室港に設置している潮位計が高潮警報基準値を越えた時刻とほぼ一致している。
・今回の爆弾低気圧に関して、強風による被害への危機意識はあったが、高潮による浸水に対する警戒はあまり持っていなかった様子である。
・浸水により家電製品が破損したため、帰宅直後から灯油ストーブを暖房器具として活用したとのことであった。
・災害発生直後、炊き出しを行うなど町内会での連携が行われ、日頃からの交流の重要性を感じたとの意見も聞かれた。
・家屋はなかったが西浜町の海岸沿いの道路も浸水した形跡が見られた。
・太平洋側の花咲港には防潮扉があったが、根室港の浸水した周辺には確認できなかった。

今回浸水した地域の写真

道路の左側が弥生町1丁目、右側が梅ヶ枝町1丁目。