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2014年8月6日の岩国市における斜面崩壊

更新履歴

2014年9月19日
初版掲載。

本件に関する連絡先

水・土砂防災研究ユニット担当者 若月
アウトリーチグループ担当者 大石・三好(029-863-7784)

現地調査日−2014年8月23日
調査員−若月強・山田隆二・竹田尚史

はじめに

2014年8月6日の豪雨により,山口県岩国市の新港町,保木,角,和木町瀬田,守内など複数箇所で斜面崩壊が発生して住宅などに被害を与えた(図1).
特に,岩国市新港町では,崩土が流動化して流れ下り複数の建物を破壊した(写真1).これにより1名が犠牲になった.災害発生直後の5時53分に消防への通報があったことから,崩壊は8月6日5時50分頃発生したと考えられる.
また,付近の住民によると,岩国市守内と角の崩壊はいずれも6日6時過ぎ,岩国市保木の崩壊は6日6時少し前に発生したようである(写真2,写真3).
土砂災害の減災に資するために,現地調査を実施して崩壊地の降雨・地質・地形・土層構造の特徴を検討した.



図1 雨量観測点と調査地点

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写真1 岩国市新港町の崩壊と被災地の様子

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写真2 岩国市角地区と保木地区の崩壊の様子

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写真3 岩国市和木町瀬田区と守内地区の崩壊の様子

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地質

5万分の1地質図「大竹」によると,岩国市新港町の崩壊地の基盤岩石は,白亜系上部広島花崗岩類岩国花崗岩の中−粗粒黒雲母花崗岩である.
また,岩国市保木と角の崩壊地の基盤岩石は,中粒斑状角閃石黒雲母花崗閃緑岩であり厚層風化していた(5万分の1地質図「岩国」).岩国市守内や和木町瀬田の崩壊地の基盤岩石は,ジュラ系の玖珂層群柏木山チャート岩体のオリストストローム(泥質海底地すべり堆積物)及び泥岩である(5万分の1地質図「大竹」).

降雨

山口県土木防災情報システムのデータから計算した,各観測地点(図1)における10分および1,2,3,6,24時間の積算雨量の最大値の一覧を表1に示す.なお,崩壊後の無効雨量を考慮して,降雨強度が20 mm/hr以下となってからのデータは省いて各積算雨量の計算を行なっている.上述した各崩壊地点に近い,「岩国土建」「松尾峠」「沖市」「寺山」の値を見ると,崩壊発生時刻である6日6時前後は,2時間雨量や3時間雨量の最大値の時刻と概ね一致しており,10分雨量や1時間雨量の最大値の時刻からは30分前後遅れている.
「岩国土建」における時間雨量と累積雨量の経時変化を図2に示す.この図によると,8月1日0時から5日0時までに124mmの先行降雨があった.8月1日0時から6日12時までの累積雨量は344mmに及ぶ.

また,2014年8月の広島土石流災害,2014年7月の南木曽土石流災害,2009年7月の防府土石流災害における雨量を表1に示した.いずれも岩国市新港町と同じ地質(花崗岩)の地域で発生した災害である.新港町に最も近い「岩国土建」の値は,防府災害の雨量とよく似ている.広島災害の雨量はこれらよりかなり大きい.南木曽災害の雨量は10分〜3時間までは「岩国土建」の値とよく似ているが,6時間雨量と24時間雨量がかなり小さい.

山口県土木防災情報システム
http://y-bousai.pref.yamaguchi.jp/citizen/map/kco_map.aspx?officecd=0&datakdcd=01&pop=1



表1 観測点における積算雨量の最大値の一覧 (山口県土木防災情報システムのデータから算出)

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図2 「岩国土建」における時間雨量と累積雨量の経時変化

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岩国市新港町の斜面崩壊地の地盤構造

岩国市新港町の斜面崩壊地1カ所において,崩壊形状の簡易計測と簡易貫入試験による土層構造調査を実施した(図1,写真1,写真4,写真5).
崩壊地の斜面勾配は22度であり,30〜45度程度を示す一般的な崩壊勾配と比較するとかなり小さい(図3).崩壊深は1.5〜2 mであり,1m以下で崩れることが多い一般的な花崗岩斜面の崩壊深よりもかなり大きい.崩土が通過した流送部は最大30度と急勾配であり,花崗岩の岩盤が露出している(写真4).流路脇の急斜面の土層は軟弱なU層とM層は合わせて50cmしかない(図3の140823-6).
崩壊面の土層(140823-1, 2)にはU層(運積土と風化土),M層(風化土と運積土)がほとんど存在しない.一方,崩壊地脇(140823-1)の土層には1.7mのU層が存在する.このことから,Nc値が5〜10程度の土層がすべり面になってU層と一部のM層が崩れ落ちたと考えられる.なお,Nc値が30以上は風化岩盤である.運積土と風化土はいずれもやや砂質である(写真5).
以上の結果から示唆されるように,岩国市保木と角の花崗閃緑岩の地域とは異なり,この地域の花崗岩は厚層風化していないようである.
なお,2009年の防府土砂災害(花崗岩地域)でも今回のように,急勾配の流路に接続する緩勾配斜面での崩壊が多数発生した.

(土層構造は,筑波丸東製の簡易貫入試験機(先端コーン径2.5cm,重錐5kg)を用いて計測した.先端コーンが10cm貫入するのに必要な打撃回数をNc値とする.崩壊深2〜3m以下の斜面崩壊では,一般にNc値が5〜10以下の土層が侵食されることが知られている.U層:Nc<5,M層:5≦Nc<10,L層:10≦Nc<30と区分する.)
(簡易測量には,レーザー距離計(LaserAce300, MDL製)を使用した)



写真4 新港町における崩壊地の土砂流送部の様子

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写真5 新港町の崩壊地でみられた土層の様子

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図3 岩国市新港町の斜面崩壊の形状と土層構造

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過去の災害

昭和26年(1951年)10月のルース台風(日雨量221.4mm(10月14日),積算雨量330.7mm,アメダス岩国;山本ほか,2007)では,岩国市で洪水・土石流・斜面崩壊 などにより大きな被害(全壊47戸,半壊30戸,床上浸水1,375戸;山口県)が発生しており,住民によると今回の新港町や保木の集落でも土石流が発生したようである(新港町では調査斜面の北西に隣接する沢から流出).

文献

山本晴彦・岩谷 潔・東山真理子(2007)2005年台風14号(NABI)による豪雨と山口県錦川流域における洪水災害の特徴.自然災害科学,26,55-68.
岩国市.過去の洪水
http://www.city.iwakuni.lg.jp/html/bousai/HM_/flood100/html/page003.htm
山口県(1999)錦川の治水対策の必要性
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a18600/damkensyou/jigyouhyouka7/apd1_2_2011021108144214.pdf

2014年8月6日の岩国市における斜面崩壊
http://mizu.bosai.go.jp/c/c.cgi?key=2014_iwakuni2