国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
トップ 一覧 検索 ヘルプ RSS ログイン

在学生・修了生から

 藤倉理人(2020年度 博士前期課程修了)

こんにちは。2021年3月に筑波大学大学院 生命環境科学研究科 地球科学専攻 博士前期課程を修了しました、藤倉理人です。
私は筑波大学連携大学院方式(詳細は、連携大学院に関するQ&Aのページをご参照下さい)を利用して、三隅先生の元で2年間雪に関する研究をしました。ここでは、その研究内容や研究室についてご紹介していきます。

研究について

私の研究テーマは、「Study on the aggregation of snow particles by video analysis(動画解析による降雪粒子の併合に関する研究)」です。降雪粒子が空中で衝突した際にどのような振る舞いをするのかという話で、主に新潟県長岡市にある防災科研の雪氷防災研究センターに設置されている観測機器のデータを使用し研究を行いました。また、卒業後にAMS等に論文投稿する予定です。話すと長くなるので、詳しくはそちらを参照ください。

ゼミについて

防災科研は連携大学院方式であるため、いわゆる大学の「○○研究室」のように組織立っていません。これは非常に特徴的な点です。長所としては、先生が一人当たりの学生にかける時間が長く、マンツーマンで指導を受けることができるため、しっかりとした論文を書き上げることができます。一方短所としては、研究室内の横/縦の人的つながりが築けないことが挙げられます。僕個人の考えとしては、自らの研究能力を高めたい人、研究室以外で様々活動領域を持っている人には良い環境ですが、研究室内で友達を作りたい人、研究室内を主な活動の軸にしたい人にはちょっと向いていないかなと思います。
普段は週に一回、1時間半〜2時間程度、三隅先生とマンツーマンで研究の打ち合わせ(ゼミ)を行います。内容としては、初めに研究の進捗状況を確認し、次に僕の方から研究を進めるにあたって生じた問題や疑問を質問し、最後に重要な先行研究となる英語論文の講読を行う、という流れでした。
また、分野の合同ゼミである水文流域ゼミというのが木曜の6限にあり、年に2回発表をする必要がありました。スライドは英語で、日本語で話すスタイルでした。

研究室環境について

防災科研は、とても“国の研究所”といった雰囲気です。院生の居室は所内の3階、特別研究員室にあります。大学からは微妙に距離があるため、自転車移動だと多少面倒かもしれません。まあ僕は原付バイクがあったのでOKでしたが^^。室内では一人に1つずつ机とパソコンが分け与えられます。他の大気科学分野や水文科学分野の研究環境(CCSや総研棟A、理科系棟A)と比較して普通の環境ではないかと思います。またコアタイムはなく、休日も居室に入ることができるため、自分のペースで研究に集中したい方には適していると思います。因みに僕は普段、図書館の研究個室や寮の自室や帰省時は実家の部屋でも作業していたので、あまりいなかった気がします。また、防災科研は夜型の研究者の方も少数いるため、深夜に訪れて作業とかもできます。しかし本当は良くないので、控えるようにしましょう。

大学について

筑波大はいわゆる“国立大学”といった雰囲気です。学生は真面目で優秀な人が多く、キャンパス内では「フォ〜〜!」とか「ウヒャ〜〜!」とか叫んでいる陽気な方は基本的に見かけません(僕の出身の日大にはいました)。また、特に大学院は留学生の比率が非常に高く、水文ゼミも日本人より留学生の方が割合として高くなっています。ただし、コロナの厄災で留学生比率が下がってしまったので、今後数年は日本人の方が多いかもしれません(この文章は2021年3月13日に書いています)。それから、筑波大生は大学内の寮や大学の近くに住んでいる人が非常に多いです。統計的には5人いたら4人は大学近辺に住んでいるそうで、晩御飯を友達と食べに行く比率が高くなっている気がします。

生活について

大学の周囲にはスーパーや飲食店等が揃っているため、基本的に困ることはありません。ただし防災科研や一ノ矢学生宿舎は北に位置するため、やや不便です。僕は入学してすぐに原付バイクを買ってしまいました。また、大抵の人は普段自転車で移動しています(キャンパス内も自転車移動です)。

さいごに

防災科研の先生方は学生を指導したいという熱い意思を持ってらっしゃるのに、学びに来る学生は少ないというのが現状です。マンツーマンで丁寧な研究指導を長期に渡って受けられる機会は貴重ですので、興味を持った方はぜひ門を叩きましょう。4月ならきっと桜が綺麗に咲いています。

図1.png

 栗原璃(2019年度 博士前期課程修了)

はじめまして。
2020年3月に筑波大学大学院 生命環境科学研究科 地球科学専攻 博士前期課程を修了しました、栗原と申します。
私は筑波大学連携大学院方式(詳細は、連携大学院に関するQ&Aのページをご参照下さい)を利用して、三隅先生のもとで2年間台風に関する研究をしておりました。ここでは、その研究内容や研究室に関して少しご紹介させて頂きます。

研究内容

私の研究テーマは、「Xバンド偏波レーダーネットワークを使用した台風Mindulleの微物理構造の解析」です。防災科研が運用するXバンド偏波レーダーから得られたデータをお借りして、関東地方に上陸したMindulle(2016年台風9号)における雨滴粒径分布などの解析を行いました。その結果、降水が形成される過程を推察し、さらに台風の眼を取り囲むeyewallとらせん状に噴き出すrainbandでは、降水粒子の大きさや密度の分布が有意に異なることが明らかになりました。今後は、強さや発達段階の異なる台風との比較や数値シミュレーションの検証を行うことで、予測精度の向上に貢献していきたいと思っております。

研究室に関して

居室は所内にあります。大学からはやや距離があるため、講義のたびに行き来するのが少し大変でした。しかしM2になるとほぼ講義がないため、水文科学分野との合同ゼミ(週1回)を除くと大学に行く用事はなくなります。さらに研究室の人数は少なく(2020年3月の時点では、M2・M1が各1人+社会人Dが2人でした)、学生と会う機会が少ないため寂しさを感じることもありました。しかし、わからないことを周りの研究者の方々から直々に教えて頂ける恵まれた環境で研究することができます。また基本的にコアタイムはなく、夜間・休日も居室に入ることができるため、自分のペースで研究に集中したい方には適していると思います。

大学院入学時はレーダーの知識も乏しくプログラミングも未経験でしたが、研究者の方々の助けを借りながら無事に研究をまとめることができました。春からは研究者として、大学院で学んだことを社会に還元できるよう努めていきます。

興味を持って下さった方は、ぜひ担当教員(三隅先生・下川先生・出世先生)までご連絡下さい。研究室の一員が増えることを楽しみにしております。

typhoon.png
2016年8月22日0500UTCにおける高度1kmのレーダー反射因子の分布(●は推定された台風の中心、■はレーダー位置を示す)

 柴山拓実(2015年度 博士前期課程入学)


HPをご覧の皆様、はじめまして。私は、筑波大学 生命環境科学研究科地球科学専攻 博士前期課程1年の柴山と申します。

当コラムでは、私が所属しています、連携大学院 陸域水循環システム分野について、簡単にご紹介させていただきます。よろしくお願いします。

連携大学院方式とは、簡単に言えば、外部の研究施設へ赴き、その環境を活用しながら研究活動を行う大学院の形式です。学生は、筑波大学に併任教授・准教授として迎えられた、それぞれの施設の研究者の下で、自分達の研究に勤しみます。一流の研究者の方々から直々に研究指導を受けられるのが、連携大学院最大の魅力です。

陸域・水循環システム分野は、国立研究開発法人 防災科学技術研究所に所属する研究者の方々から構成された分野です。現在、本分野には、三隅良平先生、下川信也先生、出世ゆかり先生の3名の先生方が在籍し、それぞれの専門分野に関連した研究を行えます。各先生の研究分野に関しては、HP当該ページをご覧ください。

私は、下川信也先生の指導の下、沖縄県西表島にて造礁サンゴの研究を行っております。西表島は、手つかずの大自然が残り、イリオモテヤマネコをはじめとした、多くの固有種が生息する貴重な場所です。そして、世界の中でも、特に多くの造礁サンゴが生息する海域として有名であり、私の研究対象地域である網取湾・崎山湾は、国の自然環境保全地域に指定されています。

私の研究テーマは、『西表島網取湾・崎山湾における造礁サンゴの分布と物理環境との関係について』です。造礁サンゴとは、クラゲやイソギンチャクに近い動物で、硬い外殻を持ち、サンゴ礁の形成に大きく貢献するサンゴ種のことです。(よく混同されますが、造礁サンゴは動物で、サンゴ礁は造礁サンゴ等の遺骸が堆積した地形のことを指します。)多くの造礁サンゴは、周囲の物理環境(日光,塩分,波浪外力,流入土砂量など)に対応して、身体の形が変わるという習性があります。それ故、同じ湾の中でも、物理環境の違いによって、その場所に分布するサンゴの形は大きく異なってきます。例えば、枝状のサンゴは繊細で折れやすい為、波の穏やかな環境に分布します。反対に、平べったい形のサンゴは、波にとても強い代わりに土砂に埋まりやすい為、土砂の少ない環境に分布します。

西表島での現地調査は、結構な重労働です。サンゴ礁は水深が浅いため、エンジン付きの大型船は進入できません。その為、自分でカヤックを漕ぎ、調査地点に着いたら、フィンとシュノーケルを装着して、素潜りをします。ずっとその繰り返しなので、体力を必要とします。私もくたくたになりました。しかし、一度海に飛び込めば、手付かずの美しいサンゴ礁と色鮮やかな熱帯魚達が、調査の疲れを癒してくれます。まるで、水族館の水槽の中を泳いでいるような感覚です。そして、夜にはプラネタリウム顔負けの星空が出迎えてくれます。街明かり一つ無い南国の星空は一見の価値ありです。大変のことも多いですが、このような貴重な体験が出来る研究室は、筑波大学の中でも数える程しかないのではないかと思っています。

また、西表島の造礁サンゴ以外にも、本分野では様々な研究を行うことが出来ます。具体例としては、最先端の観測機器を用いた気象系の研究や数値モデルによる海洋環境の研究が挙げられます。そして、研究所内にある実験用大型施設を用いた研究を行うことも可能です。いずれも通常では中々実現できない、本分野ならではの研究です。

私の居室は、大学構内ではなく、防災科学技術研究所の中にあります。学生には、机とデスクトップパソコンが一人一台ずつ支給されます。食堂や自動販売機が完備され、コンビニもすぐ近くにあります。一方で、研究所は、一ノ矢学生宿舎の北側、学内から自転車で10分程度の場所にあるため、授業の際などは若干移動の手間が掛かります。そして、専攻の同期達とは離れた場所にいる為、時々寂しくもなります。しかし、ここで行える研究は、それらを補って余りある、魅力的なものばかりです。

もし、本分野に興味を持たれた方、見学を希望する方がいらっしゃいましたら、是非一度研究所までお越しください。スタッフ・学生一同、心よりお待ちしております。

陸域・水循環システム分野M1 柴山拓実

shibayama2.jpg


 吉田翔(2011年度 博士前期課程修了)


はじめまして。吉田と申します。私は2010年4月に筑波大学大学院 生命環境科学研究科 地球科学専攻 博士前期課程に入学しました。

大学院で学んだこと


私の大学院における研究テーマは一言で言うと「短時間豪雨の予測精度の向上」です。近年社会問題になっている局所的な短時間豪雨(いわゆるゲリラ豪雨)を精度良く予測する手法を開発しました。

私が所属していた研究室では、防災科学技術研究所と連携大学院方式を採っており、当時最先端で、他にはなかったXバンドマルチパラメータレーダのデータを利用することができました。このXバンドマルチパラメータレーダによる高精度雨量データを予測初期値とし、セル追跡を用いた降雨域別の移動ベクトル推定を行うことで、従来の手法では予測することが困難だった停滞性の降水システムによる豪雨の予測精度を向上させることに成功しました。

研究室の雰囲気


研究室は大学内ではなく、前述の防災科学技術研究所内にあります。学生は少ないのですが、周囲には研究者が多く、疑問点を質問に行くと丁寧に教えてくださいます。研究者の方が作ったプログラムを利用させて頂くこともでき、それが研究の主軸ともなりました。また、滞在時間の縛りはほとんどなく、朝早くから夜遅くまで研究所に籠もっていました。設備の面でも、広い机、一人一台のパソコンを与えて頂き、のびのびと楽しく研究することができました。

現在の仕事


私は現在、民間の気象系会社に就職し、学生時代に培った気象レーダの知識を活かして、短時間降雨予測手法の研究・開発等に携わっています。大学、研究機関との共同研究もしており、さらなる降雨予測の手法の開発を目指しています。プログラム作成に関しても、学生時代に培った知識で通用しており、大変助かっています。

仕事の成果を学会で年に2、3回発表する機会もあり、今でも学生時代にお世話になった研究者の方々との交流があります。お会いすると研究内容について褒めて頂けたり、改善点を指摘して頂けたりと、とても感謝しております。卒業してからも研究研究の毎日ですが、楽しく過ごしています。

学びたいことがはっきりとしていれば、それを全力で支えて頂ける環境です。是非、この研究室で興味のあることに挑戦し、自らの研究を深めてください。

sonde.jpg