国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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令和元年台風第19号に伴う大雨と強風について(速報)

更新履歴

  • 令和元年10月13日 初版
  • 令和元年10月18日 床上・床下浸水件数を更新

連絡先 

  • 水・土砂防災研究部門 清水・加藤・Shakti・平野・鈴木・飯塚・三隅

 概要

各地に大きな被害をもたらしている令和元年台風第19号について、大雨や強風に関する解析結果を報告します(速報につきデータや内容が更新・変更されることがあります)。概要としては

  • 千曲川流域や阿武隈川流域の降水量は、所により再現期間が100年を超える非常に稀な量であった
  • 台風に伴う強風域は、東京湾沿岸から房総半島、茨城県東部を通過した

ことが分かりました。

 24時間降水量の「再現期間」

測定された降水量が「確率的に何年に1回起こるか」を極値統計の理論に基づき算出したものを、降水量の「再現期間」と呼んでいます。台風19号に伴う10月13日0時時点で記録された前24時間降水量の再現期間を、5kmメッシュで計算しました。千曲川流域や阿武隈川流域では、24時間降水量の再現期間が百年を超えている箇所が多くあり(右図)、それぞれの流域において「非常に稀な降水量であった」ことが分かります。

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図1.(左)2019年10月13日0時における前24時間降水量の分布(mm)。データは国土交通省XRAINを利用。(右)2019年10月13日0時における前24時間降水量の再現期間(年)。太い黒枠は河川の流域界を示す。

再現期間の計算方法


 データ同化による地上の風速分布の推定

観測データと数値シミュレーションを組み合わせ、抜けのない格子点データを作成する手法をデータ同化と呼んでいます。防災科研では、1kmメッシュ、10分更新のデータ同化システムをリアルタイムで運用し、地上風等の推定を行っています。下図は、データ同化によって得られた10分間隔の風速分布を示しています。風速25m/sを超える強風域が、台風の通過とともに東京湾から流入し、千葉県東部から茨城県東部に移動していく様子が分かります。

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図2.データ同化による2019年10月12日18:00〜21:50の風速の分布(図の上の時刻は世界時で書かれているので注意)。

データ同化の方法

  • K. Shimose, S. Shimizu, R. Kato, and K. Iwanami, “Analysis of the 6 September 2015 Tornadic Storm Around the Tokyo Metropolitan Area Using Coupled 3DVAR and Incremental Analysis Updates,” J. Disaster Res., Vol.12, No.5, pp. 956-966, 2017.

https://www.fujipress.jp/jdr/dr/dsstr001200050956/

参考:ドップラーレーダで解析された高度1kmの風速

関東に展開されているXバンドドップラーレーダのネットワーク(国土交通省XバンドMPレーダ、防災科学技術研究所および防衛大学校が所有するXバンドレーダ)を活用して、高度1kmの風速分布を推定しました。上空の風速分布は地上の風速とはかなり異なっています。

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図3.Xバンドレーダネットワークで観測された風速の分布

 台風の経路と被害状況

マーシャル諸島の東の海域で発生した台風19号は、10月6日から7日にかけて中心気圧が24時間で77hPaも低下するなど急発達しました。マーシャル諸島通過後は北に向きを変え、小笠原諸島、伊豆諸島周辺を通過後、 12日19時頃に中心気圧955hPa・中心付近の最大風速40m/sで伊豆市付近に上陸し、北東に進み三陸沖に抜けました。東海・東日本の広範囲に大雨をもたらし、各地で河川の氾濫が生じたほか、千葉県市原市では竜巻の被害をもたらすなどしました。

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図4.床上・床下浸水件数(消防庁災害対策本部「令和元年台風第19号による被害及び消防機関等の対応状況(第19報)」による。高知県の浸水はうねりによるもの。

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図5.2019年10月10日18:00(JST)〜12日23時までの積算雨量(気象庁のアメダスを利用)

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図6.海面気圧と850hPaの風ベクトルの変化。左上の時刻は世界時である(ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)の高解像度予報の初期値より図を作成)。

 謝辞

防衛大学校ドップラーレーダのデータはX-NETの枠組みの中で小林文明教授から提供されました。国土交通省XバンドMPレーダのデータは、国家基幹技術「海洋地球観測探査システム」:データ統合・解析システム(DIAS)の枠組みの下で収集・提供されたものです。また国土交通省XRAIN雨量データは河川情報センターより、気象庁レーダデータおよび局地モデルデータは気象業務支援センターより配信されたものです。