国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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2014年8月20日の広島県における大雨土砂災害

(速報につきデータが修正・更新される場合があります。)


更新履歴


2014年8月21日
初版掲載。

2014年9月5日
一部修正。

2014年9月11日
現地調査結果を掲載

本件に関する連絡先


水・土砂防災研究ユニット担当者 前坂・出世・三隅・若月
アウトリーチグループ担当者 大石・三好(029-863-7784)

気象担当−前坂 剛出世 ゆかり
現地調査担当−三隅 良平飯塚 聡若月 強・酒井 将也
(現地調査日−2014年8月22日)

 概要


 2014年8月20日の未明、広島市で集中豪雨が観測されました。この大雨に伴い、広島市安佐南区、安佐北区では土砂災害が発生し、甚大な被害が出ています。
 下記の初期解析より、広島市で観測された集中豪雨は、バックビルディングタイプの線状降水帯によりもたらされたと考えられます。


 降雨の分布


図1は国土交通省のXRAIN(XバンドMPレーダー)と気象庁Cバンドレーダー雨量の合成により作成した8月19日18時から8月20日午前6時までの12時間積算雨量の分布図です。200mm以上の雨が降った領域は、南西から北東の走向を持つ長さ約23km、幅約5kmの線状の領域に集中していたことが分かります。また、土砂災害が発生した安佐南区と安佐北区周辺では、12時間に250mmを超える雨が降ったことがレーダーによる雨量情報より推定されました。


図1. 国土交通省のXRAIN(XバンドMPレーダー)と気象庁Cバンドレーダー雨量の合成による8月19日18時から8月20日午前6時までの12時間積算雨量分布(背景地図はGoogle Earth使用)。



 広島市に集中豪雨をもたらした降水システムの立体構造


図2に国土交通省のXRAIN(XバンドMPレーダー)で観測されたレーダー反射因子の三次元分布を示します。降水システムの南西端では積乱雲が次々と発生しており、発達しながら降水帯に沿って北東方向に移動しました。40dBZのエコー領域は最大で高度15kmに達しており、20日1時半頃から4時頃にかけて、55dBZを超える非常に強いレーダーエコーが土砂災害が発生した地域の上空を連続的に通過したことが分かりました。

動画はこちら
2014年8月20日広島豪雨3Dレーダ動画

r3d_20140820_hiroshima.bmp
図2. 国土交通省のXRAIN(XバンドMPレーダー)で観測されたレーダー反射因子の三次元分布を土砂災害発生地点の南東上空から見た様子。白・青・黄色・赤の等値面はそれぞれ30dBZ、40dBZ、50dBZ、55dBZのレーダー反射因子(降雨強度換算で、それぞれ3mm/時、12mm/時、49mm/時、100mm/時)を示す。図中の赤球は、土砂災害が発生した安佐南区と安佐北区の位置を示す。図中の矢印は高度15kmの高さを示すスケールである(動画はこちら;約9.2MB)。地図情報は国土地理院地図(色別標高図)を利用。

 崩壊・土石流の分布

国土地理院が撮影した斜め空中写真(地理院地図参照)から判読した土石流や斜面崩壊の場所を,降雨の分布を示した図1の上にプロットしたものを図3に示す.土石流や崩壊が山地流域の外の住宅や道路など生活の場まで流下した場合は,被害を与えた場所をプロットした.また,山地流域内で停止した場合には停止地点をプロットした.なお,空中写真の撮影範囲は概ね強雨域と一致しているが,空中写真の撮影範囲外にある土石流や崩壊地はかなり少ないことを現地踏査によって確認した.
図3によると,降雨が集中する地域と土石流や斜面崩壊の場所は概ね一致していることが読み取れる.また,1999年広島豪雨災害の土石流や崩壊の発生場所((財)河川情報センター編)と比較すると,今回の発生場所は数km東方に位置している.

地理院地図
http://portal.cyberjapan.jp/site/mapuse4/index.html#zoom=13&lat=34.47777&lon=132.48136&layers=BTTTTTTTT

(財)河川情報センター編.脆弱な地盤と集中豪雨がもたらした住宅地の土砂災害雨,「災害列島1999〜平成11年の水害を検証する〜」.
http://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/bousai/saigai/1999/html/sete002.htm

図3 降雨分布と土石流・崩壊の発生場所

 地質

 白亜系上部広島花崗岩類の黒雲母花崗岩及び角閃石黒雲母花崗岩の分布域で,多くの土石流や崩壊が発生している(20万分の1地質図「広島」).
 ただし,大きな人的被害が発生した安佐南区八木町に関しては,5万分の1地質図「広島」によると,ジュラ系の付加体である湯来層の泥岩及び細流砂岩,しばしば礫を含む(Yum)が,白亜系上部の広島花崗岩類の細粒黒雲母花崗岩(Hf)と中粒角閃石黒雲母花崗岩(Hh)に上に載っており,キャップロックとなって阿武山(標高586m)の高標高部を形成している.この地域の崩壊は山頂付近から発生していることが空中写真により確認できることから,付加体(Yum)の斜面で発生した崩壊が土石流化したものと考えられる.なお,細粒黒雲母花崗岩(Hf)は,中粒角閃石黒雲母花崗岩(Hh)や中−粗粒黒雲母花崗岩(Hc)よりも風化の程度が弱いようである(高橋,1991).
阿武山の南東向き斜面は,己斐−広島西縁断層帯(広島市安佐南区から同市西区に至る長さ約10kmの断層帯で、五日市断層の東側約6kmをほぼ同一走向で並走する右横ずれ断層,地震調査研究推進本部)による断層線崖または断層崖と考えられ,そのため急勾配になっていると考えられる.
 また,安佐北区の東側の土石流・崩壊は,白亜系上部高田流紋岩及び匹見層群の流紋岩溶結凝灰岩の分布域ないしは,広島花崗岩との境界部に発生しているようである.


高橋裕平(1991)広島地域の地質,地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,41p. 

己斐−広島西縁断層帯−地震調査研究推進本部
http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f087_itsukaichi.htm


 災害発生時の状況に関する聞き取り調査


安佐南区緑井8丁目付近の住民

・ずっと起きていてテレビをつけていた
・3:00頃停電があった
・その前後に土砂の音がした
・3:00過ぎ,2階に避難.土砂で車が動いた

安佐北区可部町桐原桐山団地付近の住民

Aさん
・普段1メートルほどの桐原川の川幅が10メートルくらいになった
・1999年の時は大丈夫だったので油断していた
・桐原川は100年に一度くらい氾濫すると聞いていた
Bさん
・3時〜4時の間に災害が発生
・8時頃でも(水が酷いため)家から出られない

安佐北区三入南2丁目付近の被災した住民

・土砂くずれは4時頃発生,4時5分に警察にTEL
・雨がひどいので3時半までテレビは見ていた(テロップで大雨などの情報は確認).雨音がうるさかったので字幕放送
・近くでは過去に土砂崩れはあったが,自宅の裏は今回が初めて(1999年時にも崩れなかった)
・玄関及び窓から土砂や立木が入り,柱が損傷していたが,幸い助かった。また、カーテンをしていたため,ガラスによる損傷を防げたとのこと.
・停電はしていない
・崩れた後雨が止んだ