国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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2017年7月5日から6日における福岡県・大分県の大雨について

更新履歴 

  • 平成29年7月6日 初版
  • 平成29年7月7日 第2版(三次元降水分布のアニメーションを追加しました)
  • 平成29年7月11日 第3版(三次元降水分布のアニメーション(高解像度版)を追加しました)

連絡先 

  • 水・土砂防災研究部門 清水・下瀬・加藤
  • 広報担当者 菊地・三好(029−863−7784)

 概要

2017年7月5日から6日にかけて、福岡県と大分県を中心に、集中豪雨が観測されました。この豪雨に伴い、福岡県朝倉市や大分県日田町などで甚大な被害が出ています。

下記の解析から、九州北部で観測された集中豪雨は、バックビルディング(注)型の維持過程をもち、高度15kmを超える背の高い線状降水帯が長時間停滞することで発生したことが分かりました。

また、国土交通省のXバンドMPレーダの解析から、高度8km程度まで液体の雨粒が存在することが確認され、豪雨を引き起こした積乱雲が強い上昇流をもつことが示唆されました。

(注)バックビルディングとは、線状降水帯の形成・維持過程の1つであり、線状降水帯の移動方向に対して(今回の場合は東に移動)
後方に(今回の場合は、西側)、新しい積乱雲が次々と形成され、その積乱雲が線状降水帯と併合することで長時間維持される過程です。
この場合、積乱雲が風下に移動しても、新しい積乱雲が風上に形成されるので、強い雨が長時間継続し、大雨がもたらされます。

 九州北部豪雨の形成過程について

気象庁メソスケールモデルによる地表付近の風


気象庁メソスケールモデル(注)によると、梅雨前線に向かって南および南西から湿った空気が吹き込んでおり、福岡県付近でそれらの空気が合流している状況で豪雨が発生したことが分かります。

(注)数値予報に用いられている水平格子解像度5kmの気象予測モデル。


図1 気象庁メソスケールモデルによる2017年7月5日15時(日本時)における地表付近の風(矢羽根)と、空気1kg当たりの水蒸気の質量(等値線;1 g/kg間隔)。長い矢羽根は5 m/s、短い矢羽根は2.5 m/sの風速を示す。梅雨前線に向かって南および南西から湿った空気が吹き込んでおり、福岡県付近でそれらの空気が合流していた。

地上風の時間変化についての動画はこちら(2017年7月3日09時(日本時)から6日09時までの時間変化)
kyushu_201707_03-00utc_05-23utc.gif(288)

降雨の時間変化についての動画はこちら(2017年7月5日11時(日本時)から6日11時までの時間変化(上図:降雨強度、下図:積算降雨量))
fukuoka24nied.gif(336) データ提供:国土交通省,作図:防災科学技術研究所


降水システムの立体構造


国土交通省のXバンドMPレーダを合成することで得られた、大雨をもたらした雨雲の立体構造(図2)を示します。被害が報告されている福岡県朝倉市付近の上空では、東西に延びる雨雲が形成されていました。雨雲は高度15 kmを超えており、発達した積乱雲群から大雨がもたらされたことが分かりました。また朝倉市上空の高度5km以下で特に強い雨が形成されていたことが分かりました。


3Dradar
データ提供:国土交通省,作図:防災科学技術研究所
図2 4台(九千部・菅岳・古月山・風師山)の国土交通省のXバンドMPレーダを合成した、レーダ反射強度の三次元分布を有明海側(南西)から見た様子。白・青・黄・赤色の等値面は、それぞれ25 dBZ (1mm/hに相当), 40 dBZ(12 mm/hに相当), 50 dBZ (48 mm/hに相当), 55 dBZ (100 mm/hに相当)のレーダ反射強度を示す。地図情報は国土地理院地図(色別標高図)を利用した。


  レーダ反射強度三次元分布のアニメーションはこちらから

animation_170705.wmv(1958)       (5MB)データ提供:国土交通省,作図:防災科学技術研究所
animation_170705_1920x1080.wmv(77) (高画質版 17MB) データ提供:国土交通省,作図:防災科学技術研究所

降水システムの時間変化

2017年7月5日11時から16時50分までの地上の降雨分布の10分毎の時間変化を図3に示しています。図の中心がほぼ福岡県朝倉市に対応します。
この図から、11時から17時にかけて強い雨が継続していたことが分かります。この強い雨はいくつかの線状降水帯によってもたらされており、それぞれの線状降水帯が西側に形成され、東側に進んでいました。また、13時から17時にかけて形成された線状降水帯Cは東側へ移動するスピードが遅く、バックビルディング型の維持過程が起こっていたことに対応しています。

2Dradar
データ提供:国土交通省,作図:防災科学技術研究所
図3 国土交通省のXバンドMPレーダによる雨量分布の10分毎の時間変化。福岡県と大分県の県境を中心に、線状降水帯の構造の変化を詳細に示す。図中の矢印は、同一と思われる線状降水帯を示す。

降水システムの鉛直構造と降水粒子の分布

大雨の要因として、線状降水帯が長時間維持されたことをすでに述べたとおりですが、もうひとつの要因として、線状降水帯を形成する個々の積乱雲の活動度についても注目します。
バックビルディングで維持されていた線状降水帯の15時10分における鉛直構造を図4(中)に示しています。
高度14kmにおいても降水粒子の存在が確認され、非常に背の高い積乱雲が発達していたことが分かります。
また、地上付近から高度約8kmまで大きな比偏波間位相差(Kdp>2 deg/km)(注)が見られることから、その高度まで雨粒が存在していたと推定することができます。
高度8kmの気温は約-15℃であり、強い上昇流によって雨粒が凍結しないまま高度8kmまで持ち上げられていたことが示唆されます。
このことからも、線状降水帯が長時間維持したことだけでなく、線状降水帯を形成する積乱雲の活動が活発であったことも大雨をもたらした要因であると考えることができます。

(注)比偏波間位相差とは、MPレーダで得られる雨粒の存在量と関係したパラメータ。


KDP_REF_VER
データ提供:国土交通省,作図:防災科学技術研究所
図4 15時30分における高度2kmのレーダ反射強度の水平分布(左)と、左図の破線におけるレーダ反射強度の鉛直断面図(中)、および比偏波間位相差(右)。