国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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2019年10月12日に千葉県市原市で発生した竜巻被害調査(速報)

更新履歴

令和元年10月15日 初版
令和元年10月17日 2版

概要

2019年10月12日午前8時過ぎ、日本列島に接近する台風19号の前面にあたる千葉県市原市で竜巻と推定される突風による被害が発生した。1名が亡くなり、怪我人も多数発生した。また、家屋にも多くの被害が出た。水・土砂防災研究部門では10月14日に現地調査を実施し、被害分布と被害の概略について調査を行った(鈴木 真一)。ここでは、その調査結果について紹介する。
なお、本調査はすべての被害を網羅したものではなく、本調査で確認されたもの以外にも被害はあったと考えている。
以下の本文中の地図は国土地理院地図(電子国土Web)を利用した。

(第2版)
被害踏査に加え、竜巻をもたらした積乱雲に伴うメソサイクロンの解析を気象レーダーのデータデータを用いて行った(前坂 剛)。

被害分布

 被害の大まかな分布を図1に示す。図中央部で数多くの家屋の損壊が見られた。深刻な被害の家屋も多く見られた(写真1)。また、市津多目的グラウンドの東側では、フェンスの支柱が西側に倒れていた(写真2)。被害は家屋の被害が多数見られた地域から南東及び北西に 1 km くらい離れたところでも樹木の折れなどが見られ、竜巻は南東から北西へ移動したと推測される。この方向への風が強かったことが、被害の状況からも見て取れた。

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図1 被害の見られた場所と被害の状況。被害はこれ以外にもあると思われる。太い黒矢印は、写真1と2の撮影位置及び方向を示す。


中心部1.jpg
写真1 県道21号に沿った地域の被害の様子。

グラウンド東側1.jpg
写真2 市津多目的グラウンド東側の支柱の倒れ。

竜巻を発生させた積乱雲とそれに伴うメソサイクロン

 竜巻が発生した12日の朝は台風19号が日本列島へ接近中であり、関東及びその周辺では、台風の東側を北上する温かく湿った空気の影響により広範囲で降水が観測されていた。気象レーダーの観測結果から、市原市付近では東南東―西北西の走向をもつ積乱雲の列が通過しており、その中の一つで「メソサイクロン」や「フックエコー」など、竜巻をもたらす積乱雲によく見られる特徴的な構造が解析された(図2)。

kantoichihara.png
図2 竜巻の発生した頃の2019年10月12日8時10分(日本時間)における降雨強度分布(左図)と、その一部を拡大した降雨強度(色)及び高さ 1 km における積乱雲の移動に相対的な風の分布(右図)。降雨強度ついては国土交通省XRAINのデータを、風のデータについては気象庁及び防衛大学校のドップラー気象レーダーの観測データを使用した。