国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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静岡県賀茂郡西伊豆町浮島および安良里の土石流(土砂流)・斜面崩壊・甌穴

静岡県賀茂郡西伊豆町浮島は西伊豆町の北西側、安良里は、西伊豆町の西側にそれぞれ位置している。この調査地域は、新生代第三紀中新世の地層が分布している。

土砂災害被害の発生場所

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土砂災害被害発生場所周辺の地質図

nisiizu.go.jpg

 斜面崩壊現場の状況

※?〜?は地図上の記号に対応

西伊豆町浮島?

国道136号線に並行する私道沿いで斜面崩壊が発生した。短時間の集中豪雨により上流から大量の水や土砂が流れ込み、斜面が崩壊した。調査時は修復工事をしていた。

浮島図1.jpg

崩壊斜面より上部は、国道136号線を挟んでランの栽培をおこなっている農園がある。農園と国道136号線の間にある法面でも小規模の斜面崩壊が発生しており(写真右上のブルーシートが見えるところ)、そこから国道や崩壊斜面に水や土砂が流れ込んだようである。

浮島図2.jpg

崩壊面の土層の粒度分析結果
080709_西伊豆.JPG
粘土(〜8φ)6.5 %、シルト(8〜4φ) 10.8 %、砂(4〜-1φ)47.9 %、礫(-1φ〜)34.8 %


平成20年6月23日・29日の大雨と突風

西伊豆浮島?

ラン農園の奥には幅5m以下の小さな沢があり、沢の入り口から約100m上流までの範囲に、写真ような表層崩壊地が3カ所程度みられた。これらの崩壊面には岩盤が露出しており、土層はかなり薄いことが考えられる。またこの範囲の沢は、上流部は岩盤が露出し、沢の出口付近には土砂が堆積しており、土砂流が発生したように思われた。
浮島図3.jpg

浮島図4.jpg

西伊豆浮島?

沢の入り口から下流側(農園側)を撮影した写真(上)であり、土砂流により写真の範囲内には厚さ30cmほどの土砂が堆積した。調査時には土砂は重機により脇に寄せられていた。
下の写真は、上の写真左側に発生した崩壊である。

浮島図5.png

浮島図6.jpg

西伊豆浮島?

沢からの流水は農園のほぼ中央を通り?へ流れ込んだ。
写真は、?のブルーシートが掛けられていた場所で、上述の小規模な崩壊地(写真では奥側)の脇に流水による甌穴(ポットホール)のようなものが形成されていた。甌穴の規模は直径約5m、深さ約3m。
法面の背後にある軟弱なラン畑の土は法面によって保護されたため、ほとんど崩壊しなかったが、流水が法面のコンクリートより流下するのを妨げられたため、渦流が発生し甌穴が形成されたと思われる。
農園関係者の話では、「今までこのような被害はなかった。被害は6月29日の午後3時から5時ごろだった」とのことである。
浮島図7.png

西伊豆町安良里?

安良里の土砂災害の現場は、国道136号線沿いの黄金崎トンネルの南側を流れる水路沿いで、浮島と同じように短時間の集中豪雨により上流から土砂が流れ込んだ。
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西伊豆町安良里?

黄金崎トンネル南側から250m上流へ移動した場所には、砂防工事がおこなわれている。
すでに大部分の土砂は重機により撤去されていた。
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西伊豆町安良里?

?から上流は幅5m以下の小さな沢となっており、写真の表層崩壊地は?から250m上流に位置している。この辺りの沢は非常に急峻であり、表層崩壊による崩土が沢に入り、土石流化したと思われる。
また、山地斜面の表層土層には、樹木の根がむき出しになっている場所が多かった。
表層土層は粘土質であり透水性が低いと考えらるため、表面流による侵食が発生したことが原因であろう。
今回の短時間の集中豪雨では、多量の表面流が発生して沢に流れ込み、急激に流量を増加させたと考えられる。
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2008年6月23日・29日大雨被害調査