国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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平成30年台風第12号による伊豆半島東岸における高波について

(速報につき内容が更新・変更されることがあります。)

更新履歴

  • 平成30年7月31日 第一版

連絡先

  • 水土砂防災研究部門 飯塚・下瀬・下川
  • 広報担当者 笹嶋・菊池(029-863-7798)

概要

平成30年台風第12号は、伊豆半島東岸の神奈川県小田原市や静岡県熱海市に高波による被害をもたらしました。この高波の発生(図1)は、当該地域への台風の接近時刻と満潮(大潮)の時刻が重なったことに加え、異例な台風のコースのため北東の風が当該地域に吹き続けたこと(図2)など、いくつかの条件が重なったためと考えられます。

当該地域において、風速(AMeDASの1時間毎の平均風速)が20m/sを超えたのは1979年以降では14回のみ(図3)で、稀な事例であると考えられます。また、通常の台風のコース(西から東)では、うねり成分(周期9秒以上の波)は、伊豆半島にブロックされるため、当該地域(伊豆半島東側)に強くは入ってきませんが、今回の台風では、うねり成分が強く入ってきており(図1:下図の黄から赤の部分)、その意味でも稀な事例であると考えられます。

過去に似たようなコースを通った台風は、1951年の統計開始以降では、1983年の台風第6号のみです(図4)。しかし、今回は太平洋高気圧の持続により海面水温が平年より高かったため、より発達していた点が異なります。

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図.1 気象庁局地モデルによる関東から中部地域の2018年7月28日の有義波の波高(m:上図)と周期(秒:下図)。矢印は地表10mの風を表す。

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図2. 防災科学技術研究所リアルタイム客観解析システムによる相模湾付近の2018年7月28日15時(日本時)から21時(日本時)までの地表付近の風の分布の変化(アニメーション)。矢印は風向、色の違いは風速を表す。

  • 防災科学技術研究所リアルタイム客観解析システム:数値気象モデルCReSSと3DVAR+IAUによるデータ同化を用いた,リアルタイム客観解析システムによる地表付近の風の推定値の2018年7月28日15〜21時の10分毎のアニメーション。初期値・境界値には2018年7月28日12時の気象庁MSMの予測値を利用。水平格子間隔は1kmで,10分間隔でデータ同化による解析を行っている。データ同化には,XRAIN及びXNETのX-MPレーダの動径風速と反射強度,防災科研が運用中のドップラーライダの動径風速とマイクロ波放射計の可降水量を用いている。(参考文献:Ken-ichi Shimose, Shingo Shimizu, Ryohei Kato, and Koyuru Iwanami, Analysis of the 6 September 2015 tornadic storm around the Tokyo Metropolitan area using coupled 3DVAR and incremental analysis updates., J. Disaster Res., Vol. 12, 956-966, 2017 https://www.fujipress.jp/jdr/dr/dsstr001200050956/

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図3. AMeDAS網代における2018年7月28日の1時間毎の平均風速(上図)と、過去39年間(1979年1月1日から2018年7月29日)の1時間風速の頻度分布(下図)(網代は、熱海に最も近いAMeDAS観測点)。

  • 1979年以降1時間毎の平均風速が20m/sを超えたのは、次の14回:1995年9月17日6時、8時、1996年6月19日7時、9月22日11時、2004年10月9日16時、2005年4月7日15時、2006年3月17日5時、2008年4月8日6時、7時、8時、9時、14時、2013年10月16日4時、2018年7月28日17時。

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図4. 2018年台風第12号と類似したコースをとった1983年台風第6号(WMOは世界気象機関の略称)