国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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令和6年9月能登半島豪雨による土砂流出推定範囲 -石川県能登半島北部-

更新履歴

 2024年10月1日 初版
 

担当者

 水・土砂防災研究部門 秋田 寛己、飯塚 聡

本サイトの短縮URL → https://mizu.bosai.go.jp/key/2024Noto_2


令和6年9月能登半島豪雨による土砂流出推定範囲 -石川県能登半島北部-


 概要

 令和6年9月の豪雨で土砂災害のあった石川県能登半島北部を対象に、1月1日の地震ならびに9月21日の豪雨前後の光学衛星データを用いて計算したNDVI(正規化植生指数)差分値から、土砂流出推定範囲を抽出し、地震・豪雨各々を誘因とした分布状況の違いを速報的に調べました。
 その結果、図1に示したように、いずれの誘因でも能登半島北部のほぼ全域で発生・分布しており、今回の豪雨起因の土砂流出範囲は地震で裸地化したピクセル(斜面)に隣接し発生したものが多く見られ、拡大崩壊が頻発していたことが推察されました。地域別に見ると図2図3に示したように、輪島市西側の門前町や東側の町野町地区では、地震と豪雨いずれも土砂流出範囲が集中していました。また、図4に示したように、輪島市西側の美谷町・桶滝地区では豪雨による土砂流出範囲がやや多い傾向がありました。
 ピクセルベースかつ解析領域(A=692km2)が限られた抽出結果ではありますが、土砂流出範囲の個数は、地震起因が約2,200個、豪雨起因が約1,900個でした。一方で裸地化した面積を比較すると、地震起因が5.8km2、豪雨起因が2.6km2であり、地震起因が2倍以上でした。豪雨起因の土砂流出範囲のうち、地震で発生していた裸地と隣接した個数は、約530個(面積は約1km2)であり当初の地震による裸地から拡大した箇所が多く見られました。
 なお、解析結果の広域的な分布状況については防災クロスビューをご参照下さい。

(↓抽出結果のshpファイルはこちら)
 ダウンロード shp.zip(37)

図1_1.png

図2_1.png

図3_1.png

図4_1.png


 NDVI差分値を用いた土砂流出範囲の推定手法について

 近年は斜面崩壊や土石流といった土砂移動現象による土砂災害が広域的に発生するケースが見られ、災害後の応急復旧のためにも土砂流出の発生場所とその範囲を把握することが必要です。このような応急対応に資する情報発信を目的とし、水・土砂防災研究部門では、土砂流出推定範囲を抽出する手法の開発に取り組んでいます。
 以下の光学衛星データを使用し、NDVI差分値に閾値を定めて二値化画像を作成し、斜面傾斜角により土砂流出の推定範囲を抽出しました。
 
 -使用した光学衛星データ-
  Sentinel-2/MSI(分解能10m、L2A)
  地震災害前:2023年8月3日AM8:59(JST)撮影、災害後:2024年6月13日AM8:59(JST)撮影
  豪雨災害前:2024年6月13日AM8:59(JST)撮影、災害後:2024年9月26日AM8:59(JST)撮影
   ※GISアプリケーションは、ArcGIS Pro(ESRI JAPAN)を使用。

 図5図6に災害前後の光学衛星データから作成したNDVI差分画像を示します。解析領域は、報道 1) による土砂災害発生地域を広域にカバーするように設定しました。なお、使用した衛星データは分解能10mであるため、面積100m2(10m×10m)以下の変化は明瞭に捉えられません。
 斜面崩壊や土石流などの土砂移動現象により裸地化した範囲はNDVI差分値が大きくなり、白色であらわれます。
 1)NHK NEWS WEB

図5_1.png

図6_1.png


 次にNDVI差分値に閾値を定め、土砂流出の可能性のある範囲を抽出します。
 閾値は0.25以上を適用し、土砂流出の可能性のある範囲を抽出しました。加えて、国土地理院10mDEM 2) を使用して対象領域での斜面傾斜角を整理し、既存の調査結果など 3)4) から、斜面傾斜角10度以上を土砂流出推定範囲と判断しています。
 2)基盤地図情報(国土地理院)
 3)砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)解説(国土技術政策総合研究所.2016)
 4)土石流・流木対策指針解説等(林野庁森林整備部.2019)