概要
和歌山県那智勝浦町では、死者27名、行方不明者1名、全壊家屋103棟、半壊家屋905棟、床上浸水440棟、床下浸水962棟の甚大な被害が発生しました(数値は11月15日現在)。
那智川流域と地区名(那智川河川計画図に加筆)
井関地区の被害
床上浸水による大量のごみ(井関地区)
市野々地区の土石流被害
浸食された道路(川関地区)
気象状況
アメダス雨量
下の図は、気象庁アメダス雨量計の1時間雨量の変化を示しています。新宮(新宮市)では9月4日4:00に131.5mm、色川(那智勝浦)では9月4日0:00に75mm、西川(古座川町)で9月4日1:00に35.5mmが記録されており、新宮と色川では4日9:00以降が欠測になっています。
24時間雨量の分布(解析雨量)
2011年9月3日8:30〜4日8:30の、24時間雨量の分布を示しています(データは気象庁解析雨量、背景地図はGoogle Earth)。強い雨は山地に集中しており、那智川の上流では700mmを超える雨量があったものと推定されます。
レーダエコーの状況
2011年9月3日21:05〜4日05:55における、気象庁合成レーダのアニメーションを示しています。4日未明に70mm/hを超える猛烈な雨域が紀伊半島南東部にはりつき、局所的に大雨を降らせている様子がわかります。
那智勝浦町内における聞き取り調査結果
調査目的 災害前後の住民の行動、防災情報の伝達状況
調査日時 平成23年9月14日及び15日
調査場所 和歌山県那智勝浦町天満,川関,井関,市野々地区
調査対象 那智川流域地区住民(無作為)41名
調査者 三隅 良平・岩波 越・加藤 敦・若月 強・吉井護・佐藤高広
聞き取り方法 住民と会話をしながら、調査を行う
対象者の性別・年齢
防災意識
前日には豪雨になることを想定していた人は少なく、不意打ちの大雨であったが、避難場所については知っている人が多く、防災意識の高さがうかがえる。
事前の対策
不意打ちの大雨を反映して、半数以上が「対策を講じていなかった」という回答であった。多くの人が「いつもの雨」と認識していた。
災害発生時の行動
災害発生時刻は深夜であったが、起きていた住民が多かった。にもかかわらず、避難しなかったという回答が多かった。これは,「今すぐ避難すると危険だという判断により自宅にとどまった」という住民が多かったためである。家屋の2階で水が引くのを待ったという回答が多かった。
防災情報について
その他の回答として、目視で川の水位を確認していた人もいた。地区によっては停電により情報収集ができなかった。インターネットでの情報収集は少なかった。
避難の指示について
「防災無線」(屋外のスピーカーまたは室内の受信機)という回答が多かった。雨が強すぎて防災無線が聞こえず、指示を知らなかった人が8名いた。また近所の人から指示された人もいた。