国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
トップ 一覧 検索 ヘルプ RSS ログイン

2018年6月29日に米原市で発生した竜巻の被害調査報告

連絡先 

  • 水土砂防災研究部門 下瀬・鈴木
  • 広報課担当者 菊地・市橋(029-863-7784)

 概要

2018年6月29日午後、滋賀県米原市で突風被害があり、報道によれば8名が軽傷を負った.また、米原市の調査によれば140棟の家屋に被害が生じた(6月30日現在).
彦根地方気象台の調査では、突風は竜巻で、その強さは JEF2 であると推定された.
水・土砂防災研究部門では6月30日に現地調査を実施し、被害分布と被害の概略について調査を行った(鈴木 真一下瀬 健一).
ここでは、その調査結果について紹介する.
なお、本調査はすべての被害を網羅したものではなく、本調査で確認されたもの以外にも被害はあったと考えている.

以下の本文中の地図は国土地理院地図(電子国土Web)を利用した.

 被害状況

図1に被害調査を行ったおおよその範囲を示す.調査は南から北に行った.
赤線で示した四角の中で被害がみられ、その被害の位置を図2から図8で示す.
北方2と夫馬1の間では被害は見られなかった.

Fig1.png
図1:被害調査を行った地区.赤い線で示された各地区において確認されら被害の位置を図2から図8で示す.

図1の北方1・大鹿・山室における被害について


この地域が竜巻が通過した痕跡の見られる最南端であった.

Fig2.png
図2:図1の北方1・大鹿・山室における被害分布.

P1060121.jpg
写真1:樹木の折れ

図1の北方2における被害について


北方の住宅地では家屋に多くの被害が見られた.

Fig3.png
図3:図1の北方2における被害分布.

RIMG0116.JPG
写真2:お寺の屋根に飛ばされてきたトタン屋根が激突

RIMG0121.JPG
写真3:蔵の屋根が南方向へずれる

RIMG0106.JPG
写真4:トタン屋根めくれ


図1の夫馬1における被害について


夫馬地区では県道19号に沿って家屋や樹木に多くの被害が見られた.

Fig4.png
図4:図1の夫馬1における被害分布.

RIMG0130.JPG
写真5:屋根瓦飛散

RIMG0125.JPG
写真6:低木ねじ切れ

図1の夫馬2(きゃんせの森)における被害について


きゃんせの森付近では、多くの樹木が西向きに倒れている様子が見られた.

Fig5.png
図5:図1の夫馬2(きゃんせの森)における被害分布.

RIMG0146.JPG
写真7:樹木が西向きに倒木

RIMG0194.JPG
写真8:フェンスが西向きに傾く


図1の朝日1における被害について


朝日地区では多くの家屋に被害があった.
屋根や壁の損傷や、飛散物による損傷が目立った.

Fig6.png
図6:図1の朝日1における被害分布.

RIMG0154.JPG
写真9:木造家屋屋根飛散・上部構造変形

RIMG0158.JPG
写真10:住宅壁材はがれ

RIMG0165.JPG
写真11:飛散物による倉庫被害


図1の朝日2における被害について


朝日地区の北側でも強い風が吹いたとみられる被害が多く見られた.

Fig7.png
図7:図1の朝日2における被害分布.

RIMG0175.JPG
写真12:住宅屋根・窓ガラス・倉庫横転

図1の井之口・野一色における被害


この地区が、明瞭な被害の北限と見られる.

Fig8.png
図8:図1の井之口・野一色における被害分布.

XRAINによる降水強度の分布


XRAINの雨の分布をみると、13時40分頃に、竜巻の被害があった地域を強い雨域の南端部が通過していた.
この降雨をもたらした積乱雲が、竜巻を発生させたと考えられる.

RR_2p-mlitcxf_kanto_201806290400-0500utc.gif
図9: 国土交通省 XRAIN による1分毎の雨の分布(色)と竜巻の被害地域(黒線).


参考:気象概況


滋賀県の地表付近では、大阪湾からの風と三重県・愛知県方面からの風が合流し、
局地的な前線が形成されていたと考えられる.

Fig9.png
図10:気象庁MSMにおける竜巻が発生した頃の地上気圧と地上の風.