更新履歴
- 令和4年7月19日 初版
連絡先
- 水・土砂防災研究部門 前坂・出世・飯塚
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概要
2022年7月17日19時頃,埼玉県深谷市山河から岡部でダウンバーストとみられる突風が発生し,住家や非住家,パイプハウス,農作物などに被害が生じました.突風発生時には,活発な積乱雲が付近を通過していました.(令和4年7月17日に埼玉県深谷市で発生した突風について(気象庁機動調査班による現地調査の報告),7月17日の突風発生時の気象状況(熊谷地方気象台))
水・土砂防災研究部門では,国土交通省XRAINの3次元観測データを用いて突風をもたらした積乱雲の特徴を解析し,地上付近の局所的な風の発散と,上空のひょうの存在を示すシグナルを確認しました.
突風をもたらした積乱雲について
降雨強度・地上付近の局所的な発散
図1に,19時6分のレーダ観測に基づく降雨強度とドップラー速度を示す.深谷市周辺では80mm/hを超える非常に強い雨がみられ,突風被害が確認された地点の周辺では,地上付近に局所的な発散を示すドップラー速度分布が確認されました.地上付近の水平方向に発散する風は,下降流の存在を意味します.
図1.19時6分の(左)国土交通省XRAINの降雨強度[mm/h]と(右)国土交通省八斗島XバンドMPレーダーの仰角1.6度のドップラー速度[m/s].負の値はレーダに近づく風,正の値はレーダから遠ざかる風の成分を示す.図中の黒丸は,突風被害が確認された地点を示し,右図の赤円はレーダからの距離を5km間隔で示す.
積乱雲上空のひょうのシグナル
図2は19時10分の高度3750mにおけるレーダ反射因子(Zh)と偏波間相関係数(ρhv)の水平分布です.積乱雲上空にZhが50dBZを超える非常に強いエコーが観測されました.またこの強エコー域周辺でρhvが顕著に低い値(0.7〜0.9程度)が観測されました.これらの特徴は突風をもたらした積乱雲の上空にひょうが存在していたことを示唆しています.
図2.国土交通省XバンドMPレーダーの3次元観測データから作成した19時10分の高度3750mにおける(左)レーダ反射因子(Zh)と(右)偏波間相関係数(ρhv)の水平分布.
現地調査
調査日時:2022年7月18日
調査者:飯塚
調査場所:埼玉県深谷市普済寺