国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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X-NETが捉えた平成20年5月20日の突風

 X-NETが捉えた強風域の侵入


 X-NET:首都圏Xバンドレーダネットワークは防災科学技術研究所、中央大学、防衛大学校が所有する計4台のXバンドレーダをネットワークで結び、リアルタイムで竜巻等突風現象を監視するシステムである。
 平成20年5月20日早朝、神奈川県地方で突風が起こり、横浜市緑区では中学生が倒れた防球ネットの下敷きになり足を骨折、また緑区十日市場町および厚木市でも突風による負傷者が出た。
 5月20日午前5時(19日20UTC)から午前9時(20日00UTC)にかけての、X-NETが捉えた高度1kmの風速の分布をGIFアニメーションで示す。強風域(赤い領域)が相模湾から侵入し、北へ広がっていく様子が捉えられている。これはメソ低気圧の暖域内の風で、低気圧の中心にごく近いところに、強風域が形成されているようである。

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 気象状況

 下図は平成20年5月20日6時における、日本付近の海面気圧および風の分布を示す(データは気象庁メソ予報モデルGPV)。関東地方を数百kmスケールの低気圧(メソ低気圧)が通過しており、低気圧に向かって強い南南東の風が吹き込んでいる。低気圧の中心気圧は996hPaで、低気圧はこの後、北東に移動した。

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 海老名レーダサイトにおける気象要素の変動


 海老名レーダサイト(海老名市本郷)に設置した、VaisalaウェザートランスミッターWXT510による1分間隔の気象要素の変動を示す。早朝は風速4m/s以下であったが、午前6:30から7:00にかけて急速に風が強まり、最大風速が23m/sに達している。この急激な風速変化に伴い、気温が約2度上昇しており、この突風が低気圧の暖域の通過(温暖前線)に伴うものであることを裏付けている。また風速の急変後、雨は弱まっており、強い降雨域が強風域の前方にあったことを示している。

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2008年5月20日の大雨と突風