国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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2023年6月2日の大雨による土砂流出推定範囲 -静岡県浜松市周辺-

2023年6月2日の大雨による土砂流出推定範囲 -静岡県浜松市周辺-


更新履歴

 2023年6月5日 初版
 

担当者

 水・土砂防災研究部門 秋田寛己、飯塚聡

 概要

 2023年6月2日の大雨で土砂災害のあった静岡県浜松市周辺を対象に、災害前後の光学衛星データを用いて計算したNDVI(正規化植生指数)差分値から、土砂流出推定範囲を抽出しました。
 その結果、図1に黒矢印で示した北区周辺には、斜面崩壊や土石流に起因したと思われる土砂流出が5箇所以上で見られました。
 なお、防災クロスビュー(令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号)に広域的な抽出結果を公開していますのでご覧下さい。
 (https://xview.bosai.go.jp/

図1.png


 NDVI差分値を用いた土砂流出範囲の推定手法について

 近年は斜面崩壊や土石流といった土砂移動現象による土砂災害が広域的に発生するケースが見られ、災害後の応急復旧のためにも土砂流出の発生場所とその範囲を把握することが必要です。このような応急対応に資する情報発信を目的とし、水・土砂防災研究部門では、土砂流出推定範囲を抽出する手法の開発に取り組んでいます。
 以下の光学衛星データを使用し、NDVI差分値に閾値を定めて二値化画像を作成し、斜面傾斜角により土砂流出の推定範囲を抽出しました。
 
 -使用した光学衛星データ-
  Sentinel-2(分解能10m、L2A)
  災害前:2023年5月17日AM9:00(JST)撮影、災害後:2023年6月4日AM9:00(JST)撮影
   ※GISアプリケーションは、ArcGIS Pro 3.1.1(ESRI JAPAN)を使用。

 図2に災害前後の光学衛星データから作成したNDVI差分画像を示します。対象領域は、報道 1) による土砂災害発生地域を広域にカバーするように設定しました。なお、使用した衛星データは分解能10mであるため、面積100m2(10m×10m)以下の変化は捉えることができません。
 斜面崩壊や土石流などの土砂移動現象により裸地化した範囲はNDVI差分値が大きくなり、白色であらわれます。
 1)NHK NEWS WEB

図2.png

 次にNDVI差分値に閾値を定め、土砂流出の可能性のある範囲を抽出します。図3にNDVI差分値の閾値による二値化画像を示します。
 閾値は0.25以上を適用したところ、土砂流出の可能性のある範囲が抽出されました。ここでは、国土地理院10mDEM 2) を使用し、対象領域での斜面傾斜角を整理しています。さらに既存の調査結果など 3)4) から、斜面傾斜角15度以上を土砂流出推定範囲と判断しました。
 2)基盤地図情報(国土地理院)
 3)砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)解説(国土技術政策総合研究所.2016)
 4)土石流・流木対策指針解説等(林野庁森林整備部.2019)

図3.png
 
 さらに図3の二値化画像から雲や日陰の範囲、面積100m2未満などを除去します。最後に土砂流出推定結果は、概要の図1のとおりです。

(短縮URL)
https://mizu.bosai.go.jp/key/2023Shizuoka_Hamamatsu