国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門
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2022年9月17〜19日の宮崎県北部と南部の土砂災害における衛星画像からの斜面変動範囲の推定

2022年9月17〜19日の宮崎県北部と南部の土砂災害における衛星画像からの斜面変動範囲の推定


更新履歴

 2022年9月29日 初版
 

本件に関する連絡先

 水・土砂防災研究部門 秋田・若月

 概要

 近年は土石流や斜面崩壊といった斜面変動による土砂災害が広域かつ同時多発的に発生するケースが見られており、救助活動や早期復旧のために斜面変動の範囲を早期に把握することが求められます。防災科学技術研究所では、斜面変動範囲を抽出する手法の開発に取り組んでいます。
 2022年9月17〜19日の台風14号による豪雨で災害のあった宮崎県北部や南部を対象に、災害前後の衛星画像から作成したNDVI(正規化植生指数)差分画像を用い、斜面変動範囲の抽出を試みました。その結果、北部では椎葉村や美郷町周辺に斜面変動範囲が散在していました。南部では北部よりも斜面変動範囲の数が少なく、都城市などでわずかに抽出されました。
 なお、抽出結果は防災クロスビュー(令和4年台風第14号)にも公開していますのでご覧下さい。
 (https://xview.bosai.go.jp/

 NDVI差分画像を用いた斜面変動範囲の推定

 抽出の流れは2022年7月の宮城県大崎市周辺での解析例1)をご覧下さい。以下の衛星画像を使用し、NDVI差分値に閾値を定めて二値化画像を作成し、斜面勾配などで絞り込み、斜面変動の可能性がある範囲を抽出しました。
 1)2022年7月15〜16日の宮城県大崎市周辺の土砂災害における衛星画像からの斜面変動範囲の推定

 -使用した衛星画像-
  Planet Dove(分解能3m、L3B)
  災害前:2022年6月29日と9月9日撮影、災害後:2022年9月20日撮影
   ※GIS解析作業には、ArcGIS Pro 3.0.2(ESRI JAPAN)を使用。

 図1に災害前後の衛星画像から作成したNDVI差分画像を示します。解析領域は、24時間積算雨量の稀さが30年以上を示していた領域(水・土砂HP:令和4年台風14号に伴う大雨等)を参考に設定しました。なお、使用している衛星画像は分解能3mであるため、面積9m2(3m×3m)以下の変化は捉えることができません。
 斜面変動などにより裸地化した範囲はNDVI差分値が大きくなり、白色であらわれます。

図1.png

 次にNDVI差分値に閾値を定め、斜面変動の可能性のある範囲を抽出します。図2にNDVI差分値の閾値による二値化画像を示します。
 谷沿いの地形では日影に影響した誤抽出が考えられたことから、閾値をやや高く設定し、0.4以上を適用したところ、斜面変動の可能性のある範囲が多数抽出されました。なお、斜面勾配10度未満の範囲は、国土地理院10mDEMの標高値を使用し求めました。斜面勾配10度未満の範囲は、斜面変動の可能性が低いと判断します。

図2.png
 
 図3に完成した斜面変動範囲図を示します。これは図3の二値化画像から斜面勾配10度未満、雲または影の範囲、面積300m2未満の小規模裸地を除去したものです。なお、300m2は今年8月3〜4日の新潟県北部の解析例2)の崩壊による斜面変動範囲の面積をもとに設定しました。
 黒矢印のように、北部では椎葉村や美郷町周辺に斜面変動範囲が散在していました。南部では北部よりも斜面変動範囲の数が少なく、都城市などでわずかに抽出されました。
 2)2022年8月3〜4日の新潟県北部の土砂災害における衛星画像からの斜面変動範囲の推定

図3.png

 まとめ

 2022年9月17〜19日に宮崎県北部や南部で発生した土砂災害に対して、NDVI差分画像を用いた斜面変動範囲の抽出手法を適用したところ、北部では椎葉村や美郷町周辺に斜面変動範囲が散在していました。南部では北部よりも斜面変動範囲の数が少なく、都城市などでわずかに抽出されました。
 なお、本解析は現地調査を行ったものではないため、抽出した斜面変動を今後現地で確認することにより、抽出手法の検証・改良を加えていきたいと考えます。


2022年9月17〜19日の宮崎県北部と南部の土砂災害における衛星画像からの斜面変動範囲の推定(短縮URL↓)
https://mizu.bosai.go.jp/key/2022Miyazaki