2022年9月23〜24日の静岡県西部と中部の土砂災害における衛星画像からの斜面変動範囲の推定
更新履歴
2022年9月30日 初版
本件に関する連絡先
水・土砂防災研究部門 秋田、若月、飯塚
概要
2022年9月23〜24日の台風15号による豪雨で災害のあった静岡県西部や中部を対象に、災害前後の衛星画像から作成したNDVI(正規化植生指数)差分画像を用いて、斜面変動範囲の抽出を試みました。
その結果、図1に黒矢印で示した西部の島田市や川根本町、中部の静岡市葵区周辺には、土石流と思われる筋状の斜面変動範囲が5箇所以上で見られました。また、島田市周辺に小規模な斜面変動範囲も特に点在しており、少なくとも10箇所以上にあるものと推定されました。
なお、防災クロスビュー(令和4年台風第15号)に広域的な抽出結果を公開していますのでご覧下さい。
(https://xview.bosai.go.jp/)
NDVI差分画像を用いた斜面変動範囲の推定手法について
近年は土石流や斜面崩壊といった斜面変動による土砂災害が広域かつ同時多発的に発生するケースが見られており、救助活動や早期復旧のために斜面変動の範囲を早期に把握することが求められます。防災科学技術研究所では、斜面変動範囲を抽出する手法の開発に取り組んでいます。
抽出の流れは2022年7月の宮城県大崎市周辺での解析例1)をご覧下さい。以下の衛星画像を使用し、NDVI差分値に閾値を定めて二値化画像を作成し、斜面勾配などで絞り込み、斜面変動の可能性がある範囲を抽出しました。
1)2022年7月15〜16日の宮城県大崎市周辺の土砂災害における衛星画像からの斜面変動範囲の推定
-使用した衛星画像-
Planet Dove(分解能3m、L3B)
災害前:2022年9月12〜16日撮影、災害後:2022年9月26日撮影
※GIS解析作業には、ArcGIS Pro 3.0.2(ESRI JAPAN)を使用。
図2に災害前後の衛星画像から作成したNDVI差分画像を示します。解析領域は、24時間積算雨量が250mm以上を示していた領域(水・土砂HP:令和4年台風15号に伴う大雨等)を参考に設定しました。なお、使用している衛星画像は分解能3mであるため、面積9m2(3m×3m)以下の変化は捉えることができません。
斜面変動などにより裸地化した範囲はNDVI差分値が大きくなり、白色であらわれます。
次にNDVI差分値に閾値を定め、斜面変動の可能性のある範囲を抽出します。図3にNDVI差分値の閾値による二値化画像を示します。
閾値は2020年7月の熊本県西部での解析2)で求めた0.3以上を適用したところ、斜面変動の可能性のある範囲が多数抽出されました。ここで、斜面勾配10度未満の範囲は国土地理院10mDEMの標高値を使用し求めました。斜面勾配10度未満の範囲は、斜面変動の可能性が低いと判断しました。
2)2020年7月3〜4日熊本県西部の土砂災害における衛星画像からの斜面変動範囲抽出の試み
さらに図3の二値化画像から斜面勾配10度未満、雲または影の範囲、面積300m2未満の小規模裸地を除去します。ここで、300m2は今年8月3〜4日の新潟県北部の解析例3)の崩壊による斜面変動範囲の面積をもとに設定しました。完成した斜面変動範囲図は、概要の図1のとおりです。
3)2022年8月3〜4日の新潟県北部の土砂災害における衛星画像からの斜面変動範囲の推定